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日経平均株価3つのシナリオ~1万7,040円から2万827円まで4,000円幅=日暮昭

さて、上の式において、日経平均ベースの純資産と純利益、そしてその比率であるROEを求めれば日経平均会社の価値を得ることが出来ます。

これらの指標、および日経平均は、これまで当講座で説明してきましたように以下のように求めることができます。

  • 日経平均会社の予想1株当たり純利益=日経平均/予想PER/日経平均倍率
  • 日経平均会社の純資産=日経平均/純資産倍率/日経平均倍率
  • 日経平均会社のROE=日経平均会社の予想1株当たり純利益/日経平均会社の純資産*100
  • 日経平均=日経平均会社の価値*日経平均倍率

下図は上の指標が連続して得られる最も古い期である2009年5月から直近の2015年12月までの月次終値ベースのROEを求め、併せてこの間の平均値を示したものです。(2015年12月は18日終値)

日経平均ベースのROEの推移と平均値(月次終値ベース)―2009.5~2015.12(2015年12月は18日)―

日経平均ベースのROEの推移と平均値(月次終値ベース)―2009.5~2015.12(2015年12月は18日)―

ROEはリーマン・ショック後の2009年時点の3%台から、アベノミクスを経て2013年以降は安定的に8%台を維持しています。図中の紺色の横線がこの間のROEの平均を示しており、7.06%となっています。

資本コスト(リスクの評価)の変化によって日経平均はいくら振れる?

さて、直近の2015年12月18日の日経平均会社の純資産と純利益、ROEは当日の各指標を当てはめることで、それぞれ以下のように求まります。

  • 日経平均会社の予想1株当たり純利益=1万8,986円/15.06/8.826=142円84銭
  • 日経平均会社の純資産=1万8,986円/1.28/8.826=1,681円
  • 日経平均会社のROE=142円84銭/1,681円*100=8.50%

以下で、今後の投資環境に対応してリスク、すなわち投資家の要求するリターンである資本コストが、(1)現状が続く場合(2)10%高まる場合(3)10%低まる場合――の3つのケースについて日経平均会社の価値、すなわち日経平均がどのように変わるかを見てみましょう。

ここで、直近時点の1株当り純利益は上記のように142円84銭ですが、来期以降、足元、市場で有力視されている5%程度の増益を想定し、資本コストはROEの平均値7.06%とします。

これらを上の日経平均会社の決定式に当てはめると、現在の資本コスト(リスクの評価)のもとでは、日経平均会社の価値は2,123円となります。これに日経平均倍率である8.826を掛けると日経平均は1万8,744円と求まります。

12月18日当日の実際の日経平均より若干低い値となっています。

この現状に対して、先行きのリスクが10%高まる場合は、ROEに引き直すと7.77%となります。この場合の日経平均は1万7,040円とほぼ1万7,000円まで落ち込みます。

一方、リスクが10%低まると見るとROEは6.36%となり、日経平均は2万827円と2万円を超えることになります。

ファンダメンタルズの変化に関係なく市場のリスクの評価次第で日経平均は上下で4,000円程度変動することが示唆されます。

下図は2014年1月から直近までの月次終値ベースの日経平均と、併せて、上述の3つのケースの日経平均の位置を示したものです。便宜上、想定値の日付を2016年1月としています。

リスク評価の差によって変動する日経平均(月次終値)-2014.1~2015.12(2015年12月は18日)-※リスク評価の変動による想定値は期を2016年1月として表記

リスク評価の差によって変動する日経平均(月次終値)-2014.1~2015.12(2015年12月は18日)-※リスク評価の変動による想定値は期を2016年1月として表記

リスク見通しの差によって相場がどの程度の影響を受けるのか、数値的にメドをつけておくことは、外部環境が不安定な時に相場感をふらつかせないための有力な武器になると思われます。

皆様の相場見通しの参考にしていただければ幸いです。

筆者プロフィール:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

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投資の視点』(2015年12月24日号)より一部抜粋

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