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公的年金(GPIF)が抱え込んだ新たな問題~ジャンク債の罠=近藤駿介

7-9月期にリーマン・ショック時を上回る損失を出したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、新たな問題を抱え込んだようだ。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』)

公的年金のハイイールド債(ジャンク債)投資に疑問符

著名ファンドマネージャーも陥った「資産運用の罠」

「米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、米利上げ観測で値崩れした低格付け債に投資する投資信託が換金停止・清算を決め、投資家の心理を冷やした」(12日付日経電子版「米市場、リスク回避」)

少しでも高利回りを求めてクレジットリスクに突っ込んで行き破綻するというのは、これまで何人もの著名なファンドマネージャーやトレーダー達も陥ってきた資産運用の罠。

僅かな利回り上昇を求めて、公的年金を運用するGPIFも「分散投資」というお題目を掲げてハイイールド債への投資を増やして来ており、もはや対岸の火事ではない。

ハイイールド債から得られる収益は、失敗した時に被る損失よりも小さい。したがって、もし、ハイイールド債投資で損失が生じても年金資産に影響がないというのであれば、その投資が予定通りの収益を生んでも、年金資産全体には殆ど貢献しないということ。公的年金でハイイールド債に投資する意味自体に「?」が付く。

投資経験のない「お伽の国の有識者達」は、著名なファンドマネージャーやトレーダー達が陥った罠については何のお勉強もしていなかったのだろうか。

GPIFが抱え込んだ「新たな問題」~低格付け債市場の混乱

今年10月から低格付け債への投資を始めたGPIFは、11月30日の7-9月期の運用成績発表の席上、低格付け債のポイントをまとめた資料を示し「期日に返済されない確率は1%程度」などと訴えた。

それから2週間も経たないうちに「相対的に信用力の低い企業が発行する低格付け社債の市場が混乱している。同社債に投資する投資信託やヘッジファンドの清算が相次いでいるためだ」(14日付日経電子版)という、「1%程度」に相当しかねない事態に直面し始めているようだ。

ハイイールド債運用に踏み切ったGPIFだけでなく、GPIFからハイイールド債の運用を委託された野村アセットとユービーエス・グローバル・アセット・マネジメントも、現状について報告するのが公的年金運用のガバナンスのあり方ではないのだろうか。

もし日銀がETFの購入を中止したら――

「日銀は14日、株価指数連動型上場投資信託(ETF)を369億円買い入れ、今年の買い入れ総額が3兆325億円になった。日銀は異次元緩和で『年間約3兆円に相当するペース』でETFを買い入れるとしており、年内の必要額に達した」(14日付日経電子版)

今月に入り、10営業日中6営業日で日銀はETFを369億円(総額2,214億円)買い入れている。もし年内残りの11営業日に日銀がETFの購入を中止したらどうなってしまうのか。

最も確からしいことは、月初に日経平均が2万円を回復した時に出された「年内に6月につけた年初来高値をうかがう展開となるだろう」という専門家の御託宣が実現しそうにないということだ。

そろそろ「異次元の金融緩和」というクレージーな政策のツケを払う局面に差し掛かって来たようだ。飲んでるときの楽しさ以上に二日酔いはキツイのが世の常だ。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2015年12月13,14日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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