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中国発「逆オイルショック」はこれからが本番だ~高まる世界デフレリスク

中国が世界にデフレを輸出する2016年

しかし、今の中国で人民元の下落を放置することは、副作用も大きくなります。

まず、これまで中国に投資していた外資が、人民元が安くなる前に引き揚げようとします。また中国人自身も、先行き減価が見込まれる人民元の海外逃避を強めます。

サマーズ教授は、一国の将来は経験則から、自国民が自国通貨を国内に留めるか、海外に逃避するかで読める、と言います。

資本流出は通貨安促進、金融ひっ迫要因となりますが、人民元の下落が「近隣窮乏化」を招き、世界にデフレを輸出することになります。そして昨今のように、人民元の下落は世界の株式市場を動揺させます。

それでも中国経済が救われるのであれば良いのですが、外貨建て債務に多くを依存する中国企業には、元安が返済負担を高め、経営を圧迫することになります。

原油1バレル10ドル説も

それだけではありません。中国経済の悪化は原油や資源需要を弱め、価格下落要因となり、人民元安・ドル高も原油安要因となるので、すでにバレル30ドル近辺まで下げている原油価格がさらに下落する可能性を秘めています。

香港のスタンダード・チャータード銀行は、1バレル10ドルまで下落する可能性がある、と言います。

原油価格がさらに下がると、産油国、資源国の経済は一段と悪化し、ロシア、ブラジル、ベネズエラなどのGDPは昨年以上の大幅マイナス成長となり、中東経済や米国のシェール企業がたちいかなくなります。

石油ショックで世界が景気後退に陥ったことはありますが、今年は逆石油ショックで世界景気が後退するリスクが高まります。

それだけ世界デフレのリスクが高まり、米国の利上げ戦略は厳しくなります。それでも、ネオコンの圧力で中国、新興国つぶしを意図した利上げが継続されるリスクはあり、それが中国など新興国のみならず、世界の景気悪化につながる懸念があります。

金融政策の効果に非対称性があるため、米国の引き締めを日欧の追加緩和ではカバーできません。

米国の主導権を、中国にタフなネオコンが握るのか、中国に優しいCFRが握るかで大きく変わりますが、いずれにしても今年はいよいよ中国経済の混乱が、世界経済の台風の目になりそうです。

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マンさんの経済あらかると』(2016年1月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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