打つ手が限られる日銀、3発目の「バズーカ」は市場を失望させる恐れも
さらに懸念材料として中国経済への不安感が再び台頭した。
人民元の引き下げなどをきっかけに中国の株式市場が急落し、チャイナショックが起きた。サウジアラビアとイランとの国交断絶や北朝鮮による水爆実験とされる核実験による地政学的リスクなども加わり、リスク回避の動きの強まりで東京株式市場は下落し、それとセットにドル円も下落した格好となった。
ドル円の月足チャートをみると、2014年12月あたりから2015年12月あたりまで120円台で天井圏を形成し、そこから下抜けしようとしている格好となっている。これは2011年8月あたりから2012年10月あたりまで70円台主体に底値圏を形成してからの反発の裏返しのようなチャート形成となっている。
あくまでチャート上からではあるが、ドル円はさらに下落することが予想され、目先の目処としては110円割れあたりまでありうるか。もしドル円が110円近辺まで下落したとして、政府や日銀は何らかの対策を打ち出すのであろうか。
経済政策を前面に打ち出している安倍政権としては、円安・株高を背景としたアベノミクスが政権安定の基盤ともなっている。今年7月には参院選挙も控えている。
そのなかで原油価格の下落は続き、日銀の物価目標達成時期予想も先送りせざるを得ない状況となっている。日銀の金融政策決定会合は今年から8回しかない。参院選までは1月、3月、4月、6月の4回が予定されている。そのうち1月と4月には展望レポートの公表がある。
日銀にとり打つ手は限られている。それでも12月の異次元緩和補完措置により国債の買い入れ余地を拡げた、これは2016年の国債買入をスムーズにさせるものではあろうが、これを追加緩和に使ってしまう可能性もないとはいえない。
ただし、二度の異次元緩和ほどのバズーカ砲は撃てない。仮に日銀が円高株安と原油安による物価下落に対応するための措置として追加緩和を決定したとして、12月のECBの追加緩和の際と同様に期待外れといった認識をされる可能性も高い。
それ以上の追加緩和がさらに困難になるとして、むしろ円高圧力が強まる可能性もありうることにも注意が必要となる。
『牛さん熊さんの本日の債券』2016年1月12日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による
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