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日銀「マイナス金利」6つのポイント~円安を招くがデフレには効果なし=吉田繁治

3.デフレ対策としてはほとんど効果なし

ドルと円に対するユーロ安を生んだマイナス金利も、銀行融資をそれ以前より増やして、設備投資を生み、デフレの気分と行動を払拭(ふっしょく)する点では、影響を及ぼしていません

0.1%~0.7%程度のマイナスでは、影響がないのかもしれません。
(※注)デンマークとスイスは-0.7%です。

このためもあってか、日銀は「マイナス金利の幅を0.1%から大きくすることもある」という含みをもたせています。これが、「フォワード・ガイダンス(時間軸政策)」つまり金融政策の先行きを示唆して、金融市場を誘導することです。

4.マイナス0.1%の金利の適用範囲は、当座預金の増加分のみ

マイナス金利の内容を見ると、「現状の当座預金では0.1%の付利のままとし、マイナス金利は、今より増えた当座預金にのみ適用」とあります。

現在の当座預金残高は256兆円(16年1月22日)と巨大です。準備預金としては5兆円しかいらないので、251兆円もが、超過準備になっています。

全部の当座預金に対して-0.1%の金利なら衝撃は大きかったでしょうが、銀行の受け取り金利が減って経営を圧迫するという理由から避けられました。

現在は当座預金に特例として0.1%の金利をつけています。金額では、1年2560億円の補助金的な金利です。これを-0.1%に下げれば、銀行が、逆に金利2560億円を日銀に払うことになります。差引5000億円の差ですから、いかにも大きかった。

これを避けたため、マイナス金利が銀行のポートフォリオをリバランスする効果は弱まりました。具体的にいうと、数%の円安という効果は生んでも、銀行の融資を増やす効果は弱いままということです。

(※注)ポートフォリオ・リバランスは、日銀のゼロ金利策、マイナス金利、及び量的緩和によって、銀行が、そうではなかったときの資金運用を変えることです。具体的には、貸し出しを増やすこと。

量的緩和の目的は、このポートフォリオ・リバランスを起こすことですが、GDPゼロ成長予測から企業の借り入れ意欲が弱いため、リバランスは起こっていません。

今回のマイナス金利でも、日銀が目的にしているポートフォリオ・リバランスは起こらず、ドルを買った円が海外流出するだけです。これが円安です。その円安によって株価が上がるという経路です。

株価が上がって円安ではない。円安が先にあって、株価の上昇です。円高になると、株価は下がります。外為市場での円の売買は1日100兆円以上と、株の売買額(2.5兆円/日)よりはるかに多いからです。

Next: 5.日銀の国債の買い超はどうなるか/6.銀行はどう対応する?

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