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大波乱はなぜ起きたか?「申が騒いだ」1月相場を振り返って=山崎和邦

私はメルマガ『週報 投機の流儀』で昨年夏から「大天井はついた。今からは見送りだ」と言って6月大天井を読み切って「株式は換金して見送れ」と説いた。このアドバイスを実行された読者諸賢は、今からは「買い場探しの好機近し」と見て市場と付かず離れずの距離を取ってみるべき時である。今のこの段階で弱気を起こすことは聡明でない。

「買い場探しの好機近し」市場と付かず離れずの距離を取るべし

歴史に学べば当然の仕儀

年初(4日大発会)から6営業日連続の下落(12日まで)は、1949年東証の開設以来の記録だった。NYダウが昨年は年足で陰線だった。これも120年来で初めてのことである。大統領選挙の前年に年足が陰線だということは1896年にウォールストリートジャーナルの編集長チャールズ・ダウがNYダウを創設してから120年間で初のことだった。

このような史上初という現状が続くと大きな変事が起きる。日本市場は1月21日には高値から20%下げで、NYでは「下降相場へ転換」とされる下げ率を示現した。そして翌日は一日で940円も暴騰した。私に言わせれば当然の経過である。

この大波乱はどうして起きたか。大発会の一時600円安はリーマンショック以降の発会では最大下げ幅で、「サル騒ぐ年」と古くから言い伝えられているサル年の大発会としては誠に似つかわしかったではないか、と言いたい。

これで大発会は3年連続で下降で始まったことになった。故にこれを以てどうこう言うことはできないが、今、気になることは、年末の問題で(今は誰も言わないが)「NYダウが大統領選の前年は年足陽線だ」という120年のジンクスを破って陰線を為して終わったということと戦後初の大発会以降の6日連続安である。

これが何を象徴しているか、である。市場に起きることは、情緒面まで含めて無意味な物は何一つない。世界株安の要因としては、圧倒的に中国だということになっているが実は原油安である。

簡単に言えば、「相場は歴史に(を、ではない)学んで、過去を記憶して動く。

相場は、その都度々々が独立した事象として現れるのではなく過去を記憶して連載物として動く、このことは銘記すべきことである。ルーレットやサイコロは都度々々が過去とは独立して現象する。毎回が2分の1の確率で起きる。

1913年の「モンテカルロ事件」というのがある。ルーレットで22回連続して黒が出た。黒が10回続いたときにカジノは騒然となった。カジノに集まった紳士淑女は全員が赤に賭けた。「10回も黒だったから11回目は赤だ」と。

ところが、11回目が赤の確率は依然として2分の1の筈だ。紳士淑女諸氏は熱狂して確率論の基礎を忘れてしまったのだ。結果的には黒が22回連続して全員が所持金全額ゼロになってカジノ経営側が何十年分の巨富を一夜で稼いだ。

実は、この場にウィンストン・チャーチル卿が居た。彼は世界恐慌の引き金になった、1929年10月のNY大暴落の日にもウォール街に居た。大事件の際に現場にいる男である。彼の晩年にインタビュアーが「卿ほど功なり名を遂げた人は人生で後悔することなんか無かったでしょう」と聞くとこう言った。「いや、有る!あのときモンテカルロで黒に賭けておけば良かった!」というのだ。

これは有名な言葉であり、確率の本の欄外などに時々出て来る。「2の22乗倍」という約880万を分母とする確率の偶然が出ただけのことであった。黒が何回続こうが次に黒が出る確率は依然として2分の1だ。

相場はそれと違い、まるで相場自身が意志を持っているかのように過去を記憶して動く。しかもヒトより賢い生き物である。しかもヒトを出し抜こうとして動く、意地が悪くて頭のいい生き物である。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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