fbpx

日本景気は後退から次の局面へ、株価の大底を探る「景気低迷期」へ突入する=山崎和邦

中長期の見方:米外交方針の基本の変化

第2次世界大戦後の米国の基本的外交方針は次のような流れだったと思う。

1989年11月のベルリンの壁崩壊までは、一貫してソ連を仮想敵国に置いてきた。

90年に入ってからの米国の仮想敵国は日本になった。今考えてみればもっともだったことである。

当時日本は対外債権で世界一、貿易黒字で世界一、外貨保有で世界一、国際競争力で世界一、東証時価総額で世界一、国土の地価は世界一(特にこれは原油も鉄鋼石もキンも全部採れる北米大陸の2倍の地価を日本はしていたのだ)、愛知県一県のGDPが韓国の2倍。これが80年代後半の日本だった。

米国は今まで日本を自分の子分か弟分だと思っていたのが、自分に追いつき追い越してしまった。ここで日本に核兵器でも持たれたら自分が世界の超大国でなくなる、しかも日本は世界唯一の核の犠牲になった国であるから、核を保有する資格は国際的に認められる。その技術もカネもある。したがって、世界一の経済大国であり、核保有国にもでもなったら、米国の地位は危ういと当時思われたのだ。

レーガンは英国の盟友サッチャーとともに新自由主義を進め、日本を仮想敵として猛烈な貿易摩擦を迫った。そのうえ、プラザ合意という史上最大の悪だくみを起こして日本を疲弊させた

当時日本は愛知県一県で韓国のGDPの2倍はあると言い、日本の国土を売れば米国の国土を二度買えるなどと図に乗っていた点はあったが、米国に安全保障を依存していたし、米国の弟分であると思っていたので、米国の貿易摩擦に対しては唯々諾々としてこれに従ってきた。

日本がとった道は「輸出の自主規制」であった。トランプもおそらく中国は当時の日本のようになるだろうと思って始めたであろうが当てがはずれたというところだろう。

2001年の9月11日の米国多発テロを契機として米国の最大の仮想敵国をイラン・イラク・北朝鮮という「悪の枢軸国」となった。これはイラクのクエート侵攻を契機としてイラクに必ず核兵器と細菌兵器があると信じて爆撃で壊滅させた後データ精査したが核兵器も細菌兵器も出てこなかった。この米国の間違えた空爆はその責任をどうとるのか、誰も国際的な問題にしない。超大国に対しては口を出さないのだ。

次にオバマ政権に移ってからの8年間は仮想敵をつくらなかった。そして米国は「米国は世界の警察の役割をやめた」と自ら言って軍事・経済のハードパワーを持つ超大国の座を引退した。

そこでトランプになってから仮想敵の焦点は中国に絞られた。そして米ソの46年間に及ぶ長い冷戦に対して米中の貿易を中心とする争いは「新冷戦」と言われつつある。だが新冷戦は旧冷戦に比べてかなり複雑である。

旧冷戦時代のようにイデオロギー・価値観・経済体制が確然と区別されていた時代とは違って、今は所謂「グローバリズム」であり、両国ともに資本主義であり米国ともに市場経済である。両国ともに世界各国と貿易をしている。

ただ、中国は国営資本主義、官製市場主義であるし、価値観もイデオロギーも根本的には違うが、グローバリズムと世界貿易の点で旧冷戦時代とは基本的に複雑を極めている

Next: 日本の外交の現状を形作る、現在の環境

1 2 3 4 5 6 7
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー