欧州経済の様子
ECBは今年後半に経済・物価が勢いを取り戻すという楽観シナリオを描いてきたが、その可能性は既に低下しており、政策の修正を余儀なくされた格好である。
FRBが10年半ぶりの利下げに踏み切ったことで、その米欧の金利差は縮小の方向に向かい始めた。欧州も再び緩和路線に舵を切る。7月25日の理事会でECBは追加利下げや量的緩和政策の再開に向けた準備を進める方針を決めた。
IMF専務理事からECB総裁に就任するラガルド女史にとって、ECB総裁が切れる緩和カードは限られている。彼女にとって難問が迫っている。9月に追加緩和の公算も余地は乏しい。緩和の副作用が金融機関に打撃を与える恐れもある。
市場に厳しい金融・資本市場環境が続いており、低金利の期間がさらに長引くと想定している。
米中貿易戦争、1ヶ月の短期休戦で再開戦
米中は、7月末に上海で2ヶ月半ぶりに閣僚級の貿易協定を開いたが、時間をかけて米国から好条件を引き出そうとする中国の戦術にトランプが憤慨した。
法律ではなく条令で対処しようとした中国の常套手段の態度に怒ったのである。対中関税第4弾(全ての中国製品に制裁関税の対象を広げるもの)を9月に発動することを決め発表した。関税第4弾の対象はスマホ・パソコンなどのIT関係の全て・機械・衣料品・玩具などの消費財が含まれる。米国内の消費者に負担をかける結果になる。
個人消費を冷やす恐れがある。米国の場合にGDP構成要素の7割が個人消費である。これが冷やされることは必定である。NY株価は7月15日に付けた最高値から3%超下落した。戦後最長の景気拡大期を迎えている米景気の腰折れや米株価の下落が鮮明になれば、中国との取引に再び激しくなるシナリオもあり得る。
米中衝突の波紋は途上国の通貨・株価にも波及している
高金利通貨として外為証拠金取引で日本の個人投資家にも買われてきた南アフリカ・ランドは7月から5%下落。チリの株価は4%下がり、6日に今年の最安値を更新した。
LMEの銅相場は世界景気に敏感で世界景気に先行するが、これの先物価格は5日に2年ぶりの安値を付けた。