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日本景気は後退から次の局面へ、株価の大底を探る「景気低迷期」へ突入する=山崎和邦

「米中貿易戦争は世界経済を犠牲にする」

この標題のカギカッコ内は日本経済新聞8月3日号の社説のタイトルである。

トランプが中国に対する制裁関税の第4弾を9月1日に発動すると表明した。トランプと習近平は6月末に会って追加関税の発動を猶予して貿易戦争の打開策を協議することを確認したばかりだった。

トランプの意図はどこにあるのか。筆者が「邪推」するところによれば、彼は史上最高値に燃焼してしまったNYダウを少々冷やさないと来年の大統領選までに燃え尽きてしまう、そこで冷やしを入れた(★註)、というものだ。トランプはFRB議長に対して牽制したり催促したり露骨に行う。

トランプは大統領権限だけで遂行できる通商問題と、自分が送り込んだFRBパウエル議長への介入を以て、株価を自在に操れると思い込んでいるから始末に負えない。

米は戦後最長の好景気局面を今記録更新中だ。自ら引き起こした貿易戦争のおかげで下振れの懸念が強まり、FRBは10年半ぶりの利下げに動いた。その利下げ期待の熱狂相場に対して、少々長持ちさせるための方策があったに違いない。

(★註)NY市場が“Death of Equities.”を脱して約7倍に上昇した時、時のFRB議長グリーンスパンは“Irrational Exuberance”と言って長期上昇相場を作出した。「根拠なき熱狂」と和訳されて日本市場も警戒した。この「冷やし玉」の入れ方のタイミングが長期相場につながった。

彼が史上最長の19年間もFRB議長を務め、「神の手」「名指揮者」と言われた最初の手法はこれだった。トランプがそれを真似ているわけではあるまいが、筆者にはそう見える。短期的にはトランプに牛耳られているNY相場だと言える。

ただし、議会の承認も何も要らなかった徳川吉宗さえも、江戸時代大坂堂島の米相場を制御することができず「コメ将軍」と揶揄されたように、相場というものは本質的には人為で左右できるものではないということが市場経済の基本的な原理原則だ。

しかし、トランプが仕掛けた米中貿易戦争が実物経済に大影響を与え、中国にも欧州にももちろん日本にも大きなマイナスになることは間違いない。株価はそれを先読みして、しかも拡大し、伝播する。

米雇用の減速

16万人に減ったのはもちろん対中摩擦が下押し圧力となったからだ。日銀の使命は通貨価値の安定というただ1つが大義であるが、FRBの使命は2あって、2つ目が「雇用の発展」である。

対中摩擦が雇用の下押し圧力になるから、FRBは早期の追加緩和も考えねばならなくなるだろう。7月末のFOMCではそこまでは踏み込んだ表明はしなかったが、必ずそうなるに違いないと思う。

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