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若者に年金生活なし。選挙対策で発表を遅らせた年金財政検証で見えた悲惨な老後=斎藤満

国にできること

それでもメディアなどから将来不安などを書き立てられ、批判されるので、なるべく定年後も働き続け、年金支給を遅らせてくれれば、年金額が増える、と言って年金支給年齢を引き上げようとしています。

しかし、年金制度を苦しくしてしまった一因は政府にもあります。もともとの設計が少子高齢化を想定していなかったミスはさておくとしても、年金資産に余裕のある時代に、年金福祉事業団などが年金を各地の保養施設建設に使い、バブルが弾けてこれが二束三文になって売却されたり、「消えた年金」のように、掛けたはずの年金が消えてしまう不始末もありました。

さらに、政府は企業の社会保険負担を減らし、人件費を節約するために、率先して非正規労働を促してきました。すでに全体の4割近くが非正規雇用で、労働時間の短いパートや中小企業は、彼らの社会保険負担を免除されています。

それだけ、年金制度を支えるはずの人が少なくなってしまいました。企業のコスト負担を軽減した分、年金制度が弱体化しました。

それだけに、政府がすべきは、定年を遅らせて年金支給時期を遅らせたり、マクロスライドで年金を減らすことではなく、非正規労働者も年金制度に組み入れ、企業に半分年金負担をさせるべきです。

企業はこれまで人件費が抑えられて利益を増やしてきましたが、その使い道がなく、結局内部留保に貯めこんでいるだけです。それならむしろ非正規も含めて、年金の半額負担に回すほうが、世のため人のためです。

個人の防衛策

しかし財界は、人件費増につながる非正規雇用への年金負担には抵抗しています。政府も企業も当てにならないとすれば、最後は個人が自衛せざるを得なくなります

厚生年金を負担してくれる企業で働く人は、なるべく長い期間働けるようにして、年金支給時期を遅らせることで、受給時の年金受取額を増やす手があります。

もっとも、企業によっては年金負担をしてくれないところもあり、そうした企業で働く人は、自分でコツコツ貯めて、将来の年金分を自ら作るしかありません。

その際、iDeCo(イデコ)と言って、非課税で「老後資金を自分で作る制度」があります。60歳まで毎月一定の額を拠出して、投資信託や保険商品、定期預金などで積み立て、60歳以降にこれを年金として受け取るものです。

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