3年連続の増加が確実視、自社株買い10兆円突破の勢い
もうひとつ、日経1面に自社株買いの話題が出ていました。
※参考:自社株買い、今年度10兆円突破へ‐日本経済新聞社(2019年9月30日公開)
2019年度は年度として初めて10兆円を突破する勢いだそうです。
米中対立などで景気に先行き不透明感が漂い、成長に向けた投資に踏み切りにくい状況下で、蓄積した自己資金の振り向け先として自社株の取得を選択するケースが増えているようです。
調査センターのアイ・エヌ情報センターによると、2019年4月~9月(25日集計)の自社株取得枠の設定は前年同期比9割増の5兆1,082億円とのこと。
すでに過去最高だった2018年度実績(7兆円弱)の7割を超す水準で、3年連続での増加が確実視されています。
上期の設定額は年度全体の5割弱のため、2019年度は10兆円に達する可能性が高いですね。
上場企業の経営者の宿命として、現金預金の残高が高すぎると、事業の投資リターンを高める適切な資金投下先を見つける能力を経営者が持っていない、と判断される可能性が高い背景が挙げられます。
上場企業の株主は、常に投資リターンの高い資金運用先を探しているため、現金預金で大事な資金を眠らせている経営者にいつまでも大事な元本をあずけては置けません。
だから、自社株の取得により株主への還元への動きをみせるなどしないと、すぐに株主から売り圧力=株価低迷というかたちでの報復を受けるリスクがあるわけです。
ここが未公開企業である中小企業のオーナーとの根本的な立ち位置の違いになるわけですね。
自社株を取得すれば、資本市場で流通する株式の供給量が減りますから、需要と供給の関係で見ても、株価が上がる有力な要因となりえます。
中小企業オーナーと上場企業経営者の大きなプレッシャーの違いが、会社の時価=株価を気にしなければいけないかどうか、という点に集約されます。
いずれにせよ、今年度は投資よりも株主還元が優先のトレンドが強くなっている、という日経トップの見解は非常に興味深いといえるでしょう。
image by : soi7studio / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年9月30日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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