私が口酸っぱく警鐘を鳴らす根底にある「後悔」
上記のような危険性から、私は信用取引をおすすめしません。まして、長期投資の場合はなおさらです。株価が全く上がらなくても金利3%だけは確実にかかる不利なゲームだからです。
万が一長期投資で信用取引を利用するタイミングがあるとしたら、「ここぞ」という時に限られます。
例えば、リーマン・ショック級の下落が訪れ、市場に割安な銘柄がゴロゴロ転がっているとします。しかし、あいにく手持ちの現金がありません。持っている株も大きく下落していますから、売るに売れず、そもそも割安なので手放したくありません。
そんな時にこそ、持ち株を担保にした信用取引で有望株を買うことが考えられます。これで足りない現金を補うことができるのです。そこでは、買うのは現物株の範囲内までとします。こうすれば、そこからさらに現物と信用の両方が30%以上下落しなければ追証は避けられます。
もっとも、これを実行するには「ここぞ」というタイミングを自分で判断できなければなりません。株価は予想を超えて大きく変化するものですから、やはり軽い気持ちでの利用は避けるべきです。
せっせと元手を作り、それをこつこつ投資して「資産」と「経験」を雪だるま式に膨らましていくことが長期投資の基本となります。最初から安易に信用取引に手を出すようでは、資産形成はうまく生きません。
また、私の判断も完全ではありません。かつて私が銘柄選択を間違えた時、入会したてでその銘柄を信用取引で購入した会員の方がいらっしゃいました。その方には信用取引の解消をおすすめしましたが、株価下落で引くに引けなくなり、最終的に数百万円もの損失を被らせてしまいました。
今思えば、信用取引の危険性をもっと直接的に伝えるべきだったと思います。
二度と同じようなことを繰り返したくないからこそ、また皆様の資産を守るためにも私は口を酸っぱくして言い続けます。「安易な信用取引に手を出してはいけません」。証券会社の甘い勧誘には気をつけましょう。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年12月9日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。