リスクを図るのに、多くの投資家から注目されるVIX指数など
では、そろそろ本題に入っていきたいと思います。
リスク指標として広く認知されているのが「VIX指数」、あとは聞いたことがある上級者は「スキュー指数」、「Fear&Greed指数」なんかも投資判断に用いられているかもしれませんね。
<VIX指数>
2018年2月、突如として米国のNYダウが前日比1,175ドル安の史上最大の下げ幅を記録したことは「VIXショック」としてあまりにも有名になりました。これは10/9号の『老後資産1億円達成への相場道 ~株式投資において欠かせない基礎知識その2~』でも書きましたが、米長期金利の急上昇が引き金となって株式市場が心臓マヒを起こした事態でした。
そもそもVIXとはボラティリティー・インデックスの略で、米国のS&P500指数が近い将来、現在の水準から年率で何%上昇もしくは下落し得るのか数値化し、オプション市場の価格から導き出されます。
投資家の不安心理が高まるとリスク回避行動を取り、プット・オプション(売る権利)を大量に買い込み、VIX指数が上昇することから“恐怖指数”とも呼ばれています。
このVIXショック時には37ポイント台をつけ2015年のチャイナ・ショック以来の水準に達して、マーケットはまさに売りが売りを呼ぶ負の連鎖となりました。
記憶に新しい2018年12月25日のブラック・クリスマスと呼ばれた時もこのVIX指数は36ポイント台にまで跳ね上がっており、15ポイント以上は警戒水域、20ポイント以上は避難水域とされています。
<スキュー指数>
“恐怖指数”と呼ばれるVIX指数と同様に投資家の不安心理を測るもう一つの指標が「スキュー指数」です。
VIX指数よりもテール・リスク(発生する確率はかなり低いとされる一方、起きてしまうと甚大な影響を及ぼすリスク)を意識した指数で、規模的にも数年あるいは数十年に一度の大惨事を察知する指標として、別名“ブラックスワン指数”とも呼ばれています。
こちらもVIX指数同様にオプション価格から算出されますが、計算式の違いから必ずしも連動するわけではなく、スキュー指数が上昇した最近の例だと2016年6月の英国ブレグジットや2018年8月のトルコ・ショックなどの際に140ポイント台を上回りました。
これもプット・オプション(売る権利)、いわば掛け捨て保険で万が一の大惨事に備えようとする投資家行動によってその価格が上昇し、ヘッジ(損失回避)ニーズが強いことを表しています。
これを投資判断に用いる点で重要なのは、必ずしも暴落の予兆としてみることはできないことで、投資家が暴落に身構えているかどうかを表している点をきちんと理解しておく必要があるということです。
実際に上記のVIXショック時にはこのスキュー指数は遅れて上昇し始め、暴落を受けた投資家が後手に回ってプット・オプションの買いに走ったことを表しています。
このプット・オプションを買うということは、裁定取引を通じて先物売りを呼び込むため相場の下落圧力に拍車をかけることとなります。
足元では再びこのスキュー指数が不気味な上昇を見せていると日経新聞の記事にもありましたが、今の相場が強いことの裏返しとして投資家のヘッジニーズも高まっていることを示唆しているとも言えるでしょう。
つまり、ヘッジの手当てを怠っていた投資が後手に回ることで相場の一段安を招く恐れがあると言える反面、現在は投資家も高値警戒感から攻めと守りの両方を意識して半身で構えていると読み解くことができます。