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「企業に減税、個人に増税」の安倍政権。セルフ経済制裁で日本は沈みゆく=斎藤満

国内市場で見劣りする日本

こうした現象は日本に限らず、世界でも見られるのですが、国内市場、域内市場の大きな中国、米国、EUは域内の取引を開放すれば自ら大きな市場を持つだけに、反グローバル化のダメージは軽減できます。しかし、日本は海外との取引が制約されると、国内には1億2千万余りの市場しかなく、取り返しがつきません。

反グローバルの動きが短期収束するのでないとすれば、日本は主要国以上に内需の拡大が必要になります。しかも、少子高齢化が進み、人口は遠からず1億を割り込み、生産、社会保障負担などでひずみが大きくなっています。

これまでの「無策」はもはや容認できない状況となっています。

個人消費「4割経済」の弱み

特に、日本の弱みは、「輸出で稼げなくなった」点とともに、個人消費が縮小しているところにあります。

欧米では個人消費がGDPの6割から7割を占める最大需要となっていますが、日本の場合はこれが異常に低くなっています。広義の個人消費、つまり「民間最終消費」はGDPの55%を占めていますが、純粋な個人消費は42%にすぎません。

つまり、広義の個人消費には民間非営利団体の消費や、実態のない「帰属家賃」などが入って数字をかさ上げしています。実態的な個人消費は、この4-6月のGDP統計では42.2%にすぎません。そしてこれも近年になって縮小が目立つようになりました。

少し数字を紹介します。直近の純粋家計消費比率はGDPの42.2%ですが、10年前、つまり2010年の4-6月期はこれが47.4%ありました。さらに20年さかのぼって1990年の4-6月は47.0%でしたから、消費比率の低下はこの10年に急速に進んだことになります。特に、第2次安倍政権になってからの低下が顕著になっています。

この間、安倍政権が個人よりも企業の利益重視の政策をとり、異次元緩和による低金利、為替の円安、そして株高を誘導。企業利益は空前の高水準となり、設備投資も拡大しました。実際、GDPに占める設備投資の割合は、2010年4-6月の13.6%から直近では17.2%に高まっています。需要構成が個人消費から企業設備投資にシフトしたことになります。

その点、中国は日本以上に個人消費比率が低いのですが、こちらは個人が消費を抑え、貯蓄に励んでいて、その貯蓄が投資に使われる「高成長型」の構造になっています。

それに反し、日本は個人が貯蓄に励んでいるのではなく、労働分配率が低下し、所得も消費も縮小する形で、企業が代わりに内部留保という貯蓄をため込んでいます。それだけ政府がこれを使うしかなく、財政赤字が拡大する形となっています。

企業にしてみれば国内市場が右肩下がりで将来性がないとなれば、国内での設備投資にも今後は消極的になり、海外で生産力を高めるか、内部留保に積み上げるしかなくなります。政策面のみならず、企業も人件費を圧縮し、個人消費を抑圧したことが、結果的に国内設備投資意欲を損なうことになります。

やはり個人消費市場を拡大することが、内需型経済には不可欠ということになります。

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