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「企業に減税、個人に増税」の安倍政権。セルフ経済制裁で日本は沈みゆく=斎藤満

消費構造・行動の変化に注目

これを是正するためには、まず企業と家計との間の所得分配を修正する必要があります。

企業は下げすぎた労働分配率を、長期平均的なレベルに戻すことを考える必要があります。政策面では、これまでの「企業に減税、個人に増税」の是正が必要です。消費税の引き下げも検討に値します。

また日本でも所得格差、資産格差が拡大し、大企業トップの所得税率が中堅サラリーマンより低くなるケースも見られます。株など資産課税が20%に抑えられ、その他多くの特典を利用し、資産家の税金が抑えられているためで、米国では富裕層自ら資産課税、富裕者税の引き上げ提言がなされています。

日本でも所得税の累進傾斜を強め、10億円以上の資産に対する課税も検討の余地があります。

また世帯主の年齢が60歳以上の世帯が5割を超え、年金世帯が約4割になろうとしています。そしてコロナで外食や観光など外出型消費が制約され、中食、巣籠型消費、テレワーク主流の働き方による関連需要増、コミューター需要の減少などが急速に進んでいます。

その一方で金融も含めたIT化の遅れもあり、個人向けサービスの縮小分野が増えています。

所得の源泉は付加価値生産

働き方や消費行動は変わっても、消費、そして賃金所得の源泉は付加価値生産にあります。製造・非製造を問わず、付加価値生産を増やさないことには、所得も増えず、内需も増えません。その点、コロナで移動が制限され、接触が回避される中で、ビジネスには優勝劣敗が明確になってきました。従来型の接客、集客はできず、その回復を待っても期待が裏切られます。

米国では航空会社、百貨店、観光施設の経営が苦境に陥る反面、GAAFAに代表されるハイテク関連が好調で株高をけん引していますが、高級百貨店が苦戦する一方、同じ小売でもウォルマートのように成功し利益を拡大する企業もあります。日本にはGAAFAのような「主軸バッター」がいない分、動かない個人の足に代わるビジネスや、オンライン型需要の掘り起こしが必要です。宅配など運輸面での人員確保、トラック確保も必要になります。

「劣敗産業」の労働力をいかにスムーズに「優勝」産業に移動させるかも政策面での大きな課題になります。日本型GAAFAの掘り起こしに、ドローン、自動運転車、宅配ロボット活用のルール化、食料自給率を高める「稼げる農畜産業」の育成など、コロナ危機の今こそ官民一体の市場開発が望まれます。

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2020年8月配信分
  • 今こそ消費主導経済の重要性(8/24)
  • コロナで収縮する貿易に備える(8/21)
  • ドル安は長期化の可能性(8/19)
  • アフター・コロナよりもポスト・アベノミクス(8/17)
  • 中国がV字回復できないわけ(8/14)
  • 経済崩壊を回避する10兆円予備費の活用(8/12)
  • 米大統領選、バイデン候補の勝ち目は(8/7)
  • コロナフリーを獲得したニュージーランド(8/5)
  • 先鋭化するトランプの対中戦略(8/3)

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2020年7月配信分
  • 失った時間は永久に取り戻せない(7/31)
  • ワクチン開発の政治化リスク(7/29)
  • フラット化の中でドル高が修正(7/27)
  • 「骨太」の内需拡大策は付け焼刃(7/22)
  • 米国のW字型回復を懸念するFRB(7/20)
  • 劣勢のトランプ大統領に「ウルトラC」はあるか(7/17)
  • ウィズコロナで注目される健康ビジネス(7/15)
  • コロナ対策で使った11兆ドルの後始末(7/13)
  • 回復の力をそぐ2メートルの壁(7/10)
  • 試される人間の知恵(7/8)
  • 計算違いした香港中国化の代償(7/6)
  • 政治リスクが高まる日米株式市場(7/3)
  • 規制と自由、コロナ共生下の経済成果は(7/1)

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2020年6月配信分
  • 世界貿易にもコロナ・ショック(6/29)
  • 転倒した憲法改正解散(6/26)
  • 市場の期待と当局の不安がぶつかる米国経済(6/24)
  • 狂った朝鮮半島統一シナリオ(6/22)
  • 見えてきたコロナ危機の深刻度(6/19)
  • 崖っぷちの習近平政権(6/17)
  • FRBが作ったドル安株高の流れに待った(6/15)
  • 長期金利上昇を意識し始めた主要中銀(6/12)
  • コロナで狂った中国の覇権拡大(6/10)
  • トランプ「拡大G7」の狙いは(6/8)
  • 準備不足の経済再開で大きな代償も(6/5)
  • コロナより政権に負担となった黒人差別(6/3)
  • 自動車依存経済に警鐘を鳴らしたコロナ(6/1)

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2020年5月配信分
  • 非効率のビジネスモデル(5/29)
  • 再燃した香港での米中戦争リスク(5/27)
  • 日本は反グローバル化への対応に遅れ(5/25)
  • 日銀の量的質的緩和は行き詰まった(5/22)
  • トランプ再選に暗雲(5/20)
  • トランプ大統領、ドル高容認発言の真意は(5/18)
  • 堤防は弱いところから決壊する(5/15)
  • コロナの変革エネルギーは甚大(5/13)
  • 株の2番底リスクは米中緊張からか(5/11)
  • 「緊急事態宣言」延長で経済、市場は?(5/8)
  • 敵を知り己を知らば百戦危うからず(5/1)

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2020年4月配信分
  • コロナ対応にも米国の指示(4/27)
  • 原油価格急落が示唆する経済危機のマグニチュード(4/24)
  • ソーシャルディスタンシングがカギ(4/22)
  • ステージ3に入る株式市場(4/20)
  • 「収益」「効率」から「安心」「信頼」へ(4/17)
  • コロナショックは時間との闘い(4/15)
  • 株価の指標性が変わった(4/13)
  • 108兆円経済対策に過大な期待は禁物(4/10)
  • コロナ恐慌からのV字回復が期待しにくい3つの理由(4/8)
  • コロナを巡る米中の思惑と現実は(4/6)
  • 働き方改革が裏目に?(4/3)
  • 緊急経済対策は、危機版と平時版を分ける必要(4/1)

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2020年3月配信分
  • コロナ大恐慌(3/30)
  • 大失業、倒産への備えが急務(3/27)
  • 新型コロナウイルスと世界大戦(3/25)
  • 市場が無視する大盤振る舞い政策(3/23)
  • 金融政策行き詰まりの危険な帰結(3/18)
  • 政府の面子優先で景気後退確定的(3/13)
  • 市場に手足を縛られたFRB(3/11)
  • コロナの影響、カギを握る米国が動き始めた(3/9)
  • トランプ再選の真の敵はコロナウイルスか(3/6)
  • 2月以降の指標パニックに備える(3/4)
  • 判断を誤った新型コロナウイルス対策(3/2)

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2020年2月配信分
  • 世界貿易は異例の2年連続マイナス懸念(2/28)
  • 政府対応の失敗で「安全通貨」の地位を失った円(2/26)
  • 信用を失った政府の「月例経済報告」(2/21)
  • 上昇続く金価格が示唆する世界の不安(2/19)
  • IMFに指導を受けた日銀(2/17)
  • 中国のGDP1ポイント下落のインパクト(2/14)
  • 習近平主席の危険な賭け(2/12)
  • 政府の「働き方改革」に落とし穴(2/10)
  • コロナウイルスは時限爆弾(2/7)
  • 鵜呑みにできない政府統計(2/5)
  • FRBにレポオペ解除不能危機(2/3)

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マンさんの経済あらかると』(2020年8月24日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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