最終ターゲットはユニクロ。画一性と多様性の仁義なき戦い
もう1つの可能性は、ZOZOを退いてなお事業家としての目標が渦巻いているのではないかということです。
今やアパレル業界の圧倒的な勝ち組は、ユニクロを運営するファーストリテイリング<9983>です。国内2番手となるしまむら<8227>の4倍近い売上高を誇ります。
しかし、このままユニクロだけがシェアを伸ばしていったらどうなるでしょうか。みんながみんなユニクロの服を着て、画一的なファッションとなってしまいます。学校か刑務所でしょうか。
ファッションの醍醐味といえば多様性にあります。いくらお金がなかろうと、おしゃれをしたいと思うのは人間の心情です。しかしこのままいくと、ユニクロによってそのファッション文化がなくなってしまいかねません。
そこに対抗できる可能性があるとしたら、唯一ZOZOということになるでしょう。ZOZOのホームページに行けば、様々なブランドの取り扱いがあります。消費者はそこから、1つのブランドに縛られず好きなものを選ぶことができるのです。
幸い、ファーストリテイリングのオンライン化はまだ道半ばと言えます。ここでZOZOが確固たる足場を築くことができれば、ユニクロの本格的な対抗軸となることも夢ではないのです。
かつて前澤氏がゾゾスーツを発表した時、ファーストリテイリングの柳井社長は「おもちゃ」と切り捨てました。ZOZOを離れてなお、ガリバーに挑み続ける心を持っているのかもしれません。
もちろんそれを実行するには、出店企業の協力が不可欠です。かつて自社製品を発売するなど、出店企業の反発を招いた経緯がありますが、それは正しい道ではないと気づいたのかもしれません。
このままうまくオンライン化に対する助言を行うことができれば、業績改善により保有株は上昇し、なおかつアパレル業界に一石を投じられる可能性があります。そこまで考えていたとしたら、投資家として非常に面白い展開です。
これからも前澤氏の一挙手一投足から目を離せません。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年8月27日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。