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孫正義のArm売却額4.2兆円は妥当か?買った側のNVIDIA目線で分析=シバタナオキ

NVIDIAが、半導体設計大手のArm Holdingsを、現在の所有者であるソフトバンクグループから4.2兆円で買収することが発表されました。その買収金額の妥当性と、今後の懸念事項について解説します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

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※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2020年10月6日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

Q. NVIDIAがArmを買収。NVIDIAとArmの売上を言えますか?

A. 売上は、NVIDIAが年換算で約$16B(約1.6兆円)、Armが同約$1.8B(1,800億円)。NVIDIAの方が約9倍大きい。
ちなみに、時価総額もNVIDIAが約9倍大きい計算に。

NVIDIAが、半導体設計大手のArm Holdingsを、現在の所有者であるソフトバンクグループから4.2兆円で買収することが発表されました。その買収金額の妥当性と、今後の懸念事項について解説します。

今回の記事では、NVIDIAによるソフトバンクグループからのArm買収のニュースを読み解いていきます。

「半導体チップが重要なことは分かるけど、NVIDIAとArmがどのようなビジネスを展開しているのかはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

そのような方のために、本記事では、まず半導体チップ領域の代表的企業であるNVIDIAとArmのビジネスの違いに触れた上で、今回の巨額の買収金額の妥当性、買収後の懸念ポイントについて解説していきます。
※参考:NVIDIA INVESTOR PRESENTATION Q2 FY2021
※参考:Arm Limited 2021年3月期 第1四半期 IR資料

NVIDIAがArmを買収

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冒頭で説明したように、NVIDIAがArmをソフトバンクグループから買収することが発表されました。NVIDIA、Arm、ソフトバンクグループの3社の取締役会の承認は降りている状態です。

以下の記事によると、買収金額は総額で$40B(約4兆円)と、莫大な金額となっています。

NVIDIA(エヌビディア)は米国時間9月13日夜、半導体設計大手のArm Holdings(アームホールディングス)を総額400億ドル(約4兆2,450億円)で現在の所有者であるソフトバンクグループから買収する意向を正式に表明した。ソフトバンクグループは2016年に320億ドル(約3兆4,000億円)でArmを買収していた。

ソフトバンクグループは契約書署名後直ちに20億ドル(約2,100億円)を現金で受け取る。その後、取引実行時に現金100億ドル(1兆600億円)およびNVIDIA株215億ドル(約2兆2,800億円)を受け取る。この株式はNVIDIAの10%弱にあたる。さらにソフトバンクグループは、実績ベースのアーンアウトとして現金と株式を合わせて50億ドル(約5300億円)を受け取る見込みだ。

出典:NVIDIAがArmをソフトバンクグループから4.2兆円超で買収、半導体大手2社が一体に – TechCrunch Japan(2020年9月14日配信)

約4兆円の内訳は、以下の通りです。

・契約直後にソフトバンクグループへ支払い: $2B(約2,000億円)
・買収金額: $10B現金 + $21.5BのNVIDIA株式 = $31.5B(約3.15兆円)
・アーンアウト: $5B(約5,000億円)
・既存Arm社員の株式報酬: $1.5B(約1,500億円)

このように、シンプルに現金を支払うのではなく、NVIDIA株の引き渡しや、アーンアウト(実績等の一定の条件が成立した場合に行う支払いのこと)の条項等も含まれています。

ソフトバンクグループは、2016年に$32B(約3.2兆円)で買収したものを、(アーンアウトを除くと)$33.5B(約3.35兆円)で売却することになったわけです。

アーンアウトを除いた金額で見ると、若干資産価値は上がっているものの、2016年〜2020年における株式市場の成長と比較すると、見劣りする投資となっているとも言えるでしょう。

Next: 得意領域もビジネスモデルも異なる両社。買収金額は妥当なのか?

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