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まだ会社は辞めるな。副業で才能に目覚めた多角化経営者の成功法則=俣野成敏

会社員のまま、まずは「副業」で試してみる

話を聞いて「それ、大丈夫なの?」と思わず口にした大竹さん。彼に誘われるまま、会社帰りに一緒にお店に行くことにしました。それが当時まだチェーン化していなかったラーメン店の「花月嵐」(当時は、ニンニクげんこつラーメン花月)で、3店舗しかありませんでした。

行列ができるラーメン店は、テレビなどでも度々取り上げられ、大竹さんも好きで「ラーメン屋を職業にするのも楽しそうだな」との思いがありました。

それで、彼と一緒にラーメンを食べに行った2時間後には、その味のインパクトに「FC1号店は私がやるよ」と自ら申し出ていたそうです。

その頃、本業(不動産会社)は国策の整理回収機構の対象となり、「この不動産会社は時間の問題」と言われる状態でした。とはいえ、いきなり未経験からラーメン店を始めるわけにもいかず、考えた末に、副業からスタートすることにしました。

大竹さんは会社で20時まで働いた後、副業で21時から2時までラーメン店で働き始めます。

実は、これはとても正しい判断でした。

世の中には、「好きだからやりたい→どうせ会社も潰れそうだから、このまま独立しよう→いきなり独立して失敗」というパターンはとても多いのです。

たいてい、自分の好きなことを仕事にしてしまうと長続きません。思い入れが強いゆえに、客観視できないことが多いのです。

そういう時は、まずは副業で試してみることをオススメします。

2度目の副業で「個人事業主」に

話を戻しましょう。大竹さんは、自分なりにラーメン屋の市場調査をした上で、資金を出して自らお店をオープンします。サラリーマンをきっちりこなした上で、自分の店を切り盛りするのは大変でしたが、「やっていてまったく苦にならなかった」と言います。

その理由は、「単なるお金稼ぎでやっていたわけではなかった」から。

前回の副業(ハンドドライヤーの営業)は、小遣い稼ぎのようなもので、特にこだわりはありませんでした。しかし今回は、お店を始めるに際し、“個人事業主”という要素が加わりました。

つまり「経営」という要素が入ってきたことで、そこに工夫の余地が生まれたのです。

マーケティングが得意なラーメン屋は少ない

もともと飲食業は、非常に競争が激しい業界です。工夫をしなければ、お客さんはきてくれません。

大竹さんは、ラーメン店を運営して面白いことに気づきました。ラーメン店を始めるのは職人肌の人が多く、美味しいラーメンを出すことにはこだわりがあっても、マーケティングには熱心ではなかったのです。

大竹さんの場合、お店はFCですから、本部の決めた味付けに忠実でなければなりません。けれど売上は、自分の収入に直結します。

大竹さんは「どうしたらお客さんに足を運んでもらえるのか?」ということを考え抜き、チラシ作成や店づくりなど、アイデアを次々と形にして、現場で実践していきました。

お店の売り上げは順調に推移し、培ったノウハウを積極的に本部と共有することで、特別に本部と共同で3店舗を出すまでになったのです。

ラーメン店を始めて3年が過ぎ、自分のお店も3店舗になってくると、さすがの大竹さんも、体がきつくなってきました。その頃には本部も大きくなっており、上昇気流に乗って「全国展開しよう」という話が出ていました。

この機に、大竹さんは不動産会社を退職。ノウハウを共につくってきたラーメンチェーンの本部に、取締役FC本部長として着任。本格的にチェーンの全国展開に参画することにしたのです。

その後、会社は10年で店舗を約300店にまで拡大。ついに業界1位に上り詰めました。

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