軍事力強化に邁進する中国
その中国だが、直近の動きはかなりきな臭くなっている。これまでの軍事体制をより強化し始めていることだけは確かである。
中国の習近平国家主席(中央軍事委員会主席)は25日、中央軍事委軍事訓練会議で演説し、「戦争準備への集中」を訴え、訓練の強化を指示した。「世界一流の軍隊」の実現を目標に掲げる習氏は、先端技術を導入するなどして実戦能力の向上を急ぐよう改めて求めた。
アメリカの対中制裁は続く
一方、米商務省は今年に入り、中国やロシア向けの輸出管理を強化してきた。米国企業が軍事用途で特定品目や技術を輸出する際は、同省の許可が必要である。中国企業89社には、米欧の航空機メーカーと競合する中国商用飛機(COMAC)や中国航空工業集団(AVIC)が含まれる。また、ロシア企業28社も候補に挙がっている。
トランプ政権は昨年、次世代通信規格「5G」競争をにらみ、安保上の懸念を理由に輸出を事実上禁止する外資を並べた「エンティティー・リスト」に中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を加えた。また、中国軍関連企業に対する米国からの投資を来年1月11日から禁じる措置を発表している。
バイデン政権で米国の力は徐々に低下していく
さらに米国務省のエイブラムス・イラン担当特別代表は25日、イランのミサイル開発プログラムに加担しているとして、中国とロシアの4団体を対イラン制裁の対象に加えると発表した。
エイブラムス氏は、「米国はイランに対し圧力を掛け続けるとし、来年1月に発足する次期政権が対イラン政策を転換させると予想するべきではない」として、新政権への圧力も忘れていない。
米国はトランプ政権の下で、イランと欧米など6カ国が締結した核合意から離脱し、対イラン制裁を再開させ、両国間の緊張が高まった。
しかし、大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領は、イランが合意事項を順守すれば、核合意に復帰する可能性もあるとしている。
これを弱腰と取るかはそれぞれの判断だろうが、少なくともこれまでの米国の力は徐々に低下していく象徴の1つになることだけは確かであろう。
さらに米国防総省傘下のミサイル防衛局は、日本と米国が共同開発したイージス艦搭載迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」による大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃に成功したと発表している。同ミサイルでICBM迎撃実験を行ったのは初めてである。
このように、トランプ政権は末期を迎える中で、積極的な中国包囲網を敷き始めている。
しかし、バイデン政権がこの政策を引き継ぐかは不透明である。より緩和的な姿勢で中国に立ち向かう可能性が高い。そうなれば、米国の弱体化はますます進み、中国の覇権国家としての位置づけを決定づける役割を果たすことになるだろう。
想像もできない世界かもしれないが、すでに世界はその方向で動いている。