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物議醸す「防衛納税」熱烈支持はネトウヨではなくミリオタ? 仮に導入されても毎年1兆円ペースで増える防衛費の前には“焼け石に水”か

「ヒゲの隊長」で知られる自民党の佐藤正久参院議員がテレビ番組で発言した「防衛納税」なるワードが、SNS上で大いに取沙汰されている。

報道によれば、今後の日本の防衛費増額を巡る議論のなかで、その財源は単なる増税だけでなく、様々な発想があっていいという話の流れで、佐藤氏は「例えば、ふるさと納税があるなら防衛納税もあればいい。そういう発想があってもいい」と発言。

佐藤氏は「防衛自給率が悲惨な状況だ」と防衛費増額の必要性を訴えるとともに、「国防は最大の福祉だ。ウクライナを見てほしい。応分の負担、安定的な財源が必要で、そこは(国民に)お願いしないといけない」とも語ったという。

5年総額で43.1兆円を防衛費に投入

これまでは、GDP比でおおむね1%以内に収まっていた日本の防衛費。ただ自民党は、5年以内にGDP比2%以上を念頭においた増額を訴えているところで、23年度に約6.5兆円へ引き上げて、その後も毎年1兆円程度の上乗せを続けて、5年後の27年度には約10.8兆円まで増額。5年総額43.1兆円を投じるという目算だという。

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ロシアによるウクライナ侵攻が半年以上に渡って長引いているなか、日本周辺を見渡してみても、中国が台湾に対しての軍事的圧力を日に日に強めているほか、北朝鮮は過去に例を見ない頻度でミサイル発射を繰り返しているなど、新たな有事への懸念が高まっているのは明らか。

その反面で、航空自衛隊では整備部品の在庫が不足しているため、整備中などで使用していない他の機体から部品を外して転用するという、いわゆる“共食い”が横行。また、各地の自衛隊関連施設に関しては、そのおよそ4割が古い耐震基準で建てられ、多くが耐用年数を過ぎているという施設の老朽化問題も浮上するなど、財源不足の影響がここに来て目に見えて現れているといった状況だ。

先の戦争の反省といった観点からも、防衛費の増大に関しては厳しい声が多くあがる日本の世論だが、こういった事情も加味されてか、ここ最近行われた世論調査では防衛費の増額について、産経新聞とFNNとの合同調査では「賛成」が62.5%、同じくNHKの世論調査でも「賛成」が55%と、理解を示すといった意見がともに過半数を超える結果となった。

とはいえ、防衛費の大幅な増額となれば、取沙汰されるのはその財源を何にするかという問題。

世論調査での声としては「他の予算を削ってまかなう」という意見が圧倒的多数なのだが、先述のような巨額な費用が掛かるだけに、増税は不可避……といった空気が早くも漂っているところ。

そんな“増税”候補としては、近年税率の引き下げが続いていた法人税がまずは浮上していたものの、経団連の十倉会長からはそんな動きを懸念するが早々とあがるなど、経済界は反発の姿勢。

かといって、消費税や所得税のこれ以上の増税は、この物価高が著しい昨今、さすがに国民の理解が得られないどころか、下手をすれば倒閣の火種にもなりかねない。そんな状況下における財源確保の“ウルトラC”として、今回のふるさと納税ならぬ「防衛納税」というプランが飛び出した……といった流れのようだ。

賛成派からは早くも返礼品の内容を取沙汰する声が

そんな俄かに浮上した「防衛納税」に対して、SNS上は賛否両論といった状況。いわゆる“ネトウヨvsパヨク”の対立軸とも言えそうなのだが、一部の反対派からは、地方財政にしわ寄せが行くだけだといった見方も。

いわゆる“返礼品合戦”の過熱などもあって、ふるさと納税が大いに注目されるにいたった反面、主に都市部の自治体では住民税の税収が激減していることが大きな問題に。この「防衛納税」が、仮にふるさと納税と同じようなシステムで導入されれば、そういった状況がより顕著となるというのだ。

そんななか、逆に「防衛納税」に賛成だという向きの間で盛り上がっているのが、やはりというか“どんな返礼品が嬉しいか?”といった話題。“日本の国防の明日を憂う”といった想いの人々からの納税だけに期待するのでは、どうしても広がりに欠けるということで、ふるさと納税と同様に魅力ある返礼品を用意することが、より多くの財源確保には不可欠だというのだ。

ふるさと納税の場合だと、各地域で獲れる農水産物などが定番人気だが、「防衛納税」ともなるとその手のグルメ系が難しそうで、せいぜい“海軍カレー”のレトルトあたりが関の山といったところ。それに代わるものとしてSNS上では、使い古したヘルメットとかマガジンなどのミリタリーグッズ、あるいは演習や観艦式などの見学チケット優先配布などがあがっているようだ。

こうしてみてみると、「防衛納税」を熱烈に支持している層はネトウヨというよりも、実は“ミリタリーオタク”なのでは……といった気もしないでもないところ。とはいえ、あれだけ盛り上がっているふるさと納税にしても、直近の寄付総額は約8,302億円ということで、今後仮に「防衛納税」が導入されたとしても、毎年1兆円規模だという防衛費の増加ペースと比べれば、まさに“焼け石に水”。やはり何らかしらの形での増税は避けられない情勢のようだ。

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