いま海外のメディアでは「高市ショック」なる言葉が流通している。高市政権の拡大財政政策が、世界的な金融危機の引き金になるのではないかという懸念だ。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2025年12月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
世界で高まる「高市ショック」の懸念
日本ではまったく報道されていないが、いま海外では「高市ショック」なる言葉が拡散している。
高市政権の発足後、円安と長期金利の上昇に歯止めが効かなくなっている。それというのも、財政出動と金融緩和のアベノミクスを継承する高市政権は、経済対策で約21兆3,000億、そして補正予算では約17兆7,000億円の予算を計上し、その財源の6割を国債の発行で賄うとしているからだ。
国債の発行で市場への通貨供給は増加する。このため円安が進んでいるのだ。さらに、すでに借金がGDPの260%に達する日本が国債を新たに大量発行することは、日本の財政懸念を深化させ、国際金融市場では日本国債の売りが加速している。その結果、長期金利が急速に上昇している。12月16日には1.94%に上昇した。これは実体経済を収縮させる効果が大きい。
金利上昇がもたらす影響
金利上昇は、経済活動に対して「ブレーキ」と「正常化」の2つの側面を持つものの、いまの時点ではマイナス効果のほうが大きい。
まず住宅ローン負担の増加だ。日本の住宅ローン利用者の約7割が変動金利を選択している。金利が上昇すれば、月々の返済額が増加する。可処分所得が圧迫され、特に高レバレッジの世帯では消費意欲が減退する恐れがある。
そして企業では、借入コストの増加が負担になる。企業の資金調達コストが上昇するのだ。これで損益分岐点が高くなるため、低収益体質のまま生き延びてきた企業の倒産が増加する可能性がある。もちろん、中長期的には労働力や資本が成長産業へ移動し、日本経済全体の生産性が向上する契機となる可能性はあるが、短期的にはマイナスの影響が大きい。
一方、長らく「死に金」となっていた預金に利息がつくようになる。特に金融資産を多く保有する高齢者層にとっては所得増となり、これが旅行や高額消費を刺激する可能性がある。家計全体では、借入超過の若年層から資産超過の高齢層への所得移転が進むとの観測もある。
このように、高市政権の拡大財政政策がもたらした高金利にはプラスの側面はあるものの、住宅ローン金利や企業ローンのコストを引き上げることで、実体経済にマイナスの影響を与える可能性のほうが高い。
円安によるインフレと実質賃金の低下
さらに、円安のマイナス効果も大きい。財政規模の拡大から通貨の発行量が増加するとの懸念から、円安が急ピッチで進んでいる。年内に1ドル=160円前後になるのではとも懸念されている。日銀の利上げで円は少し高くなったものの、思ったような効果は出ていない。円安状態は脱却できていない。
この結果、インフレは一層昂進し、賃金の伸びを上回ることになる可能性は高い。実質賃金はさらに低下する可能性が高い。







