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米国の北朝鮮攻撃は期待薄?トランプのシナリオに翻弄される日本=近藤駿介

「大規模爆風爆弾(MOAB)」を実戦で使用

米中首脳会談後の12日には国連安全保障理事会が開催され、シリアで起きた化学兵器による攻撃を非難し、アサド政権にこの件で調査に協力するよう求める決議案が諮られた。

決議案自体は常任理事国であるロシアが拒否権を行使したことで否決されたが、シリア関連決議案で過去6回拒否権を行使してきた中国は棄権に回ることになった。米中首脳会談席上で黙認した手前、拒否権を行使することが難しかったからだ。

その翌日の13日には米軍は「すべての爆弾の母」とも称される「大規模爆風爆弾(MOAB)」をアフガニスタンにある過激派組織「イスラム国(IS)」の拠点に投下し、オバマ政権と異なりトランプ政権は実際に行動をすることを示した。

一般的には、シリアやアフガニスタンに対する一連の空爆は、北朝鮮に対して武力行使も辞さない意向を示す目的で行われたものだと報じられている。

しかし、こうした見方は、北朝鮮が国家として米国や同盟国に反撃する能力を有している現実を軽視したものだといえる。

シリアと北朝鮮は「まったくの別物」

国家として米国に反撃できる状況にないシリアやアフガニスタンなどは、トランプ政権の行動力を示すには格好の標的であるともいえる。しかし、国家として存在し、核弾頭を既に所有している可能性のある北朝鮮に対する軍事行動は、米国や同盟国が多大なる返り血を浴びる可能性を秘めたものであり、シリアやアフガニスタンとは次元の異なるものである。

トランプ政権は、空母カールビンソンを中心とした打撃軍を朝鮮半島付近に派遣し、北朝鮮に対して軍事圧力を掛け続けている。しかし、当初4月15日にも朝鮮半島付近に到着するといわれていたカールビンソンが実際に朝鮮半島付近に到達したのはそれから10日以上遅くなってからであった。

もしトランプ大統領が北朝鮮に対して軍事的行動も辞さないという考えを持っていたのであれば、もっと迅速な動きを見せてしかるべきである。

「小さなミサイルの発射」を黙認するのはなぜか?

米国が軍事的圧力を強める中、北朝鮮は4月29日に、4月に入って3回目となる弾道ミサイル発射実験を行った。北朝鮮のミサイル攻撃に対する避難訓練が実施されるなど警戒感が高まっていた日本国内では、地下鉄が安全確認のために一時停止するなど、これまでにない対応がとられた。

これに対して、2日前の27日に「大規模な衝突が起こる可能性がある」との危機感を示していたトランプ大統領は、「もし核実験をやるのなら、私も中国の習近平国家主席も不愉快に思うだろう」と核実験に踏み切らないよう警告を発したものの、「金正恩党委員長がやろうとしたのは、核実験でも大きなミサイルの発射でもなく、小さなミサイルの発射だった」と述べた。

こうした発言から推察されるのは、トランプ大統領は「核実験と大きなミサイルの発射」と「小さなミサイルの発射」を明確に分けており、「核実験と大きなミサイルの発射」は許さないが「小さなミサイルの発射」なら黙認するということである。

Next: 韓国、そして日本への「THAAD配備」という美味しすぎるビジネス

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