「観光立国日本」の危うさ~爆買い中国人が銀座を見捨てた真の理由=施光恒

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年9月2日号(「観光立国」が損なうもの)より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

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“爆買い”減少の理由は、中国経済の減速や円高だけではない

「観光立国」が損なうもの(2016/9/5号)より

近頃、中国からの訪日観光客によるいわゆる「爆買い」効果の終焉がよく言われていますね。

三橋さんも、8月30日の夕刊フジ(『ZAKZAK』)に次の記事をお書きになっていました。
中国経済、衰退加速 “爆買い”終焉へ 免税店大手のラオックス、赤字転落 – ZAKZAK(2016年8月30日)

三橋さんの記事も触れていますが、大型免税店を展開するラオックスの2016年1~6月期の連結決算によると、売上高は前年同月比22%減の約350億円、営業利益はなんと同90%減の4億円だったとのことです。

「爆買い」減少の理由は、中国経済の減速や円高もありますが、一番大きいのは、中国の税制の変更です。中国人の旺盛な購買意欲を日本など外国にとられるのを嫌った中国政府が、今年4月に、旅行客が海外で購入した物を中国国内に持ち込む際の税率を大幅に引き上げたのです。

例えば、高級腕時計の海外からの持ち込みの際にかかる税率はそれまで30%だったのですが、60%に引き上げられてしまいました。

爆買い需要の低下で、これを当てにしていた東京・銀座のデパートなどは、閑古鳥が鳴いているそうです。
爆買いバブル終了が銀座の百貨店を直撃、日本人を大切にせず後悔 – ライブドアニュース(2016年7月8日)

デパートの売り上げが大幅に減ったことはともかくとして、これまで培ってきた「洗練された」「高級感あふれる」「落ち着いた」街という銀座のイメージが損なわれてしまったことは残念ですね。

短期的な儲けを当てにして、外国人観光客目線の商売をすることは、長期的には、街に対する愛着を失わせてしまう恐れがあります。

今回の「爆買い」大幅減速をきっかけとして、外国人観光客に頼らない経済政策や街づくりの計画を練るべきだと思うのですが、残念ながら、そうはなかなかいかないようです。

政府は、訪日外国人旅行客の取り込みを相変わらず成長戦略の柱に据えています。2015年に約2000万人だった観光客を、2020年までに倍増の4000万人、2030年までに6000万人にしようと計画しています。

最近、政府は、「爆買い」に期待できなくなったためか、外国人観光客に、日本の自然環境や景勝地を売り込もうとしています。

例えば、下記の記事にあるように、環境省などが中心となって、日本の国立公園をブランド化し、訪日外国人を引き付ける「国立公園満喫プロジェクト」なるものを始めています。

これによって、訪日外国人の国立公園利用者数を2010年までに現在の430万人から1000万人に増やすことを目指すそうです。
国立公園のインバウンド強化、阿蘇など8公園をモデルに推進 – nikkei BPnet(2016年8月2日)
訪日客誘致でモデル森林=地域活性化へ観光活用-林野庁 – 時事ドットコム(2016年8月23日)

こうした外国人観光客を当てにした成長戦略は、前述の中国の税制変更のように外国の思惑に左右されやすく不安定だということ以外にも、「経世済民」の観点から、つまり、日本国民一般の幸福に資するかどうかという観点から本当に望ましいのか非常に疑わしいと思います。

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