テレビが報道しない「景気の悪い話」とは?
今度は景気の悪い話です。
8月の消費者物価がコアで前年比0.7%、コアコアでも0.2%の上昇となり、日経系のテレビ解説では、「いよいよ物価が上がり始めた」「賃金物価の前向き循環が始まった」とのコメントが聞かれ、「好ましい現象」と指摘していました。これには疑義があります。
まず物価を押し上げているのがエネルギー(0.5%)と食品(0.2%)、診療費(0.1%)などで、これで0.8%押し上げています。
それぞれの内訳を見ると、まずエネルギーは電気代、ガソリン、ガス代の上昇によるもので、需給の改善や賃金上昇によるものではありません。
食料でも、政府の介入でビールの安売りが禁じられ、酒類の価格上昇や、海外高を為替で吸収できないため、というものが多くあります。
診療費の引き上げも含めて、消費者には逃げ場のない、いわば増税のような価格上昇で、これは消費税引き上げと同じような、所得の圧迫、需要減退を引き起こす可能性があります。
実際、実質値の計算に使うデフレーターは、消費者物価でも「帰属家賃」を除いた実態的なもので、8月はこれが0.8%の上昇で、その分、実質所得、実質消費を圧迫しています。
つまり、これは所得増を伴わない物価上昇であり、しかも需給の反映でもなく、原油高、円安による強制的なコスト高、政府の介入による押し上げの結果があらわれています。
喜ばしくない物価上昇
消費税引き上げ時と同様に、購買力を圧迫し、需要を冷やすタイプの物価上昇であり、持続力はありません。例えば、季節調整後の前月比では、7月、8月と連続で0.1%上昇しましたが、9月の東京分は0.1%の下落となっています。
そもそも、物価上昇を喜ぶのは「アベノミクスは成功した」と言いたい政府・日銀でしょうが、マーケットから見ると、決して喜べないものなのです。
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