ドイツを苦しめるシリア難民問題は仕組まれていた
今回、ドイツで均衡財政見直しの動きが出てきた直接的な原因は景気対策ではなく、移民への支援コストが膨らみ、2016年では70億ユーロを予定したところ、100億ユーロは必要となってきたためです。それを確保しようとすれば、財政赤字を認めざるを得なくなります。
もっとも、この難民増も、元はと言えば米国や米国の訓練を受けて暴れるISによって、シリア難民が大量に流れてきたことが背景にあり、かつてナチスを逃れて大規模なユダヤ人の難民、亡命を経験したドイツだけに、難民を無視するわけにいかない国情があります。これも米国の対欧州戦略の一環です。
これに加えて、ドイツの基幹産業である自動車が、トップのフォルクスワーゲンの弱体化により、ドイツ経済全体を揺さぶり始めました。これで景気が悪化すれば、いよいよ米国の狙いである財政面からの景気対策につながります。
英国をEUに留まらせるためのドイツ弱体化作戦
ECBが追加で量的緩和を拡大する場合には、ドイツ国債の供給が必要です。ECBが各国の国債を買い入れる場合、その割合は出資額に応じた配分になるので、いやでもドイツ国債を大量に買わねばなりません。そのドイツ国債がなければ、買いたくても買えないからです。
英国はドイツが支配するEUから離脱して、その分中国に接近しています。英国の盟友米国としては、なんとか英国をEUに留まらせ、中国への接近も思い留まらせたいところ。
そのためにも、EUにおけるドイツの力を削いでおかねばなりません。
戦争責任を明らかにせず、未だに敗戦国として米国に「占領」される日本も困ったものですが、戦争責任をナチスに押し付け「今のドイツはまったく別の国」としてのし上がったドイツは、むしろ強くなりすぎたことで叩かれます。
両国を足して2で割るわけにもいきませんか。
『マンさんの経済あらかると』(2015年10月30日号)より一部抜粋、再構成
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。