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安倍総理が国会質疑で答えなかった年金運用の「不都合な事実」=近藤駿介

日経平均株価が戦後初めて大発会から5日連続下落、国会質疑では年金運用への影響が取り上げられました。しかしその内容は、野党側の質問も、安倍総理の答弁も、いずれも負けず劣らず幼稚かつ酷いものでした。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』)

年金運用と空虚な国会質疑~年明け5日間で5兆円以上が消えた?

民主議員の国会質問に安倍総理はせせら笑い

日経平均株価が戦後初めて大発会から5日連続して下落したことを受け、国会で民主党の山井議員が年金運用への影響に関して政府の見解を質しました。

しかし、その内容は、残念ながら国会で質問に立つのであれば、「もっと勉強してこい」と突っ込みたくなるような幼稚なものでした。

この4日間で約7%株は下がりました。7月から9月の時に14%下がって約8兆円年金の運用損が出ております。ということは、今回その半分の7%、この4日間で下がったわけですから、これ質問通知もしておりますが、ということは約4兆円くらいの年金がこの4日間で運用損になっている可能性があるということですか。

案の定、答弁に立った安倍総理はせせら笑いを浮かべながら「年金積立金は国内外の債券と株式の組合せで運用しているものであり、日経平均株価等の国内株価の指標がそのまま運用収益に反映されるものではないということはまず申し上げておきたいと思います。したがって、ご指摘のような質問にお答えすることは困難でございます」と軽くいなしてThe End。

「そんなこと分かってるよ」と安倍総理の答弁に対して大声で飛ばしたヤジが何とも空しく響く質問となりました。本当に年金運用のことを分かっていたらこんな低レベルの質問はしなかったはずですから、いなされて二の矢も放てずに追及お終いとなってしまいました。

野党の質問も低レベルだが、安倍総理の答弁も酷い

野党側の質問のレベルの低さにも呆れましたが、安倍総理の答弁も負けず劣らず酷いものでした。

民主党政権下であった平成21年9月~平成24年9月までの累積収益額は4.1兆円だったわけでありますが、それ以降の累積収益は今回のマイナスを含めても33兆円プラスになっているということでございまして、そこを押さえておくということが大切であろうと思います。

「フォワード・ルッキングな改革を進めていく」と繰り返している総理の答弁は、いつまでも民主党政権下の成果と比較するという「バックワード・ルッキング」なものに留まってしまっています。

さらに「年金運用というのはある程度長期的なものを見ながらしっかりとどれくらい収益が上がっているかということでありまして、安倍政権下におきましてはこのマイナスをもってしても33兆円プラスになっていたと、これが事実と申し上げておきたいと思います」と述べました。

「フォワード・ルッキング」と繰り返している総理が、「どれくらい収益が上がっているか」を基準に年金運用をしていくという明言したことは「バックワード・ルッキング」な運用方針で臨むということですから、明らかな矛盾です。しかし、こうした矛盾したような発言に対して野党側から何の反論もありませんでした。

この国会で年金運用に関して確認しなければならないことは、2014年末に「フォワード・ルッキングな分析を踏まえて長期的な観点から設定」した、リスク資産中心としたポートフォリオへの変更によって「どれくらい収益が上がっているか」を確認することであり、安倍政権下での累計収益額ではありません。

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