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MMT(現代貨幣理論)の実戦投入で想定されるシナリオ2つ。日本の未来は適度なインフレか預金封鎖か=斎藤満

評価を分けるのは「政府の信頼度」

この評価を分ける最大のポイントは、「政府の信頼度」ではないかとみられます。

従来の景気悪化局面では、主に金融緩和策を中心とした対応がなされました。ところが、突然、世界経済を機能不全に陥れるほどの危機に際しては、「こっちの水は甘いぞ」といって水を用意するような金融緩和では間に合いません。

それよりも、直接痛みを抑えるモルヒネの投与が効きます。現に、日米ともに大規模な財政赤字を承知の上で、直接的な財政面からの需要をつけ、経済の底割れを防ぎました。

しかし、モルヒネを長期間使用し続ければ、かえって体を蝕みます。必要な時に投与し、痛みが治まればすぐにやめる判断ができる名医、すなわち信用できる政府の存在が前提となります。

日米はまだ痛みが続いているのでモルヒネ投与をやめる段階でなく、政府の能力を問う段階でもありません。

しかし、かつてMMTの認識なしに、自国通貨を発行するアルゼンチンやベネズエラなどで財政の大盤振る舞いを行い、経済をモルヒネ漬けにし、結果的にインフレの火が広がり、経済を破綻に追いやったケースも見られます。政府の能力、良心如何と言えます。

最善のシナリオ

従って、日本でMMTが最善の結果を残すとすれば、それは政府が名医で、経済の状況を正しく認識し、モルヒネの投与をうまく調整できる場合に期待されるものです。

つまり、新型コロナ禍が短期間に収まるよう、十分な財政手当を行い、企業倒産を回避し、失業者を救済し、貧富の差を是正しながら経済を成長させ、1%前後の程よいインフレに誘導するケースです。

そこでは政府が必要なところにすぐさま資金を投入する「眼力」と「胆力」が必要です。

コロナの感染を抑えるために、民間機関も導入して唾液検査でどこでも行えるPCR検査を躊躇なく行い、ひっ迫する医療現場にもヒト・モノ・カネを計画的かつスムーズに投入します。ゼロコロナ実現まで休業要請し、外出制限をする際には、財政資金で必要なだけ即刻支援します。

その際、コロナ難民など弱者の救済を優先し、食料難民にはミールクーポンを支給し、家を失った人には政府が買い上げた空き家を提供したり、家賃補助を行います。そして安全を確認したワクチン接種を拡充し、海外からの渡航者も水際で徹底管理し、ウイルスを持ち込ませない形にして、経済を再開させます。

そして経済が回り始め、成長が戻れば、モルヒネの注入を停止し、インフレが出現しそうになれば、早めに増税や金利引き上げで経済の健康回復を図ります。これには経済の実態を正確に診断でき、即座に治療を行い、リハビリに移れる「名医」たる政府の存在が前提になります。

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