朝日新聞が、これまで社員ならタダで読めていた自社紙を、今後は有料にする予定だと東洋経済オンラインが伝えたことが、大きな波紋を呼んでいる。
記事によると、社員への福利厚生として行ってきた新聞購読料の補助制度を、2021年4月以降に廃止するとのこと。取材に対して朝日新聞は「購読料補助の廃止について従業員と労働組合に伝え、現在、理解を得るべく説明を行っている」とのことだ。
また昨年12月15日付の朝日新聞の社内報には、補助制度廃止の理由のひとつとして「自社の商品を自ら購読することで朝日新聞の購読部数を支えるとともに、有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけ」とも書かれていたという。
今後、新聞購読料は社員の給与から天引きする方向だが、自腹での購読継続に強制性はないとのこと。だが、社員からは「購読しなかったことで自身の評価に影響がないか」「上司からの圧力はないのか」といった不安の声、さらに「これでは自爆営業と同じではないか」という憤りの声もあがっているという。
「不動産屋のミニコミ紙」との評価も定着か
購読料補助の廃止によって、約2億円の支出削減ができると朝日新聞は睨んでいるようだが、上記のような反応を見ると、社員のモチベーションといった面でそれ以上の損失も考えられそうな今回の件。それでもコスト削減に踏み切らざる得ないのは、それだけ朝日新聞が経営的に追い込まれているということだ。
20年11月に発表した令和2年9月中間連結決算では、最終損益が419億円の赤字となり、渡辺雅隆社長が経営責任を取って退任することが決まった朝日新聞。その部数は、まさに右肩下がりの落ち込みようで、同決算によると朝刊の部数が1日平均504.8万部まで減少しているという。
もっとも新聞社の発表する部数には、販売店に押し付けて読者には配達されないまま廃棄される、いわゆる「押し紙」の分も含まれており、それを差し引いた実売部数は350万部を下回るのではという説も。800万部以上の発行部数を誇っていた最盛期と比べると、半分近くの落ち込みとなっているのだ。
この部数減少にくわえて、昨年はコロナの影響で広告収入やイベント事業の収入も縮小したとのこと。まさに踏んだり蹴ったりの状況だが、それを補っているのが不動産事業だという。
創業の地である大阪には、自社の大阪本社やホテル「コンラッド大阪」などが入居する「中之島フェスティバルタワー」が、また都内では銀座にホテル「ハイアット セントリック 銀座 東京」が入居する「東京銀座朝日ビルディング」など、ほかにも札幌・横浜・名古屋・福岡等の一等地に土地や建物を持つ朝日新聞。本業での不振をものともしない、これらの不動産事業の儲けっぷりを揶揄して、ネット上では朝日新聞のことを「不動産屋のミニコミ紙」と呼ぶ層も存在するほどだ。
記者の記事が新聞の価値を生み出すのに、記者が金を稼ぐわけではないと切り捨てるのは、朝日新聞が不動産屋のミニコミ紙である事を自ら認めてることになるのでは? wさらに社員にまで押し紙するとは恐れ入る。 https://t.co/dIxq4u0n0I
— にっし〜〜 (@nissy1973) February 26, 2021
不動産で新聞の赤字を補っている「不動産屋のミニコミ紙」で、五大紙の中で信頼度が「最低」の朝日新聞のことを悪く言わないでください!
— たかひろ@何でも垢 (@taka0920_0920) February 16, 2021
給料天引き(笑)もう廃刊でいいよ。
タダで読めていたのに…朝日新聞が赤字で「社員の購読を自腹化」の衝撃(東洋経済オンライン)#Yahooニュースhttps://t.co/R870ieUl3R
— ふじこ(kohfuji) (@kohfuji1) February 26, 2021
とはいえ、そんな不動産事業も先述の決算によると、コロナの影響により減収が発生しているとのこと。頼みの綱の不動産事業も先行き不透明となれば、本業の新聞のほうで今回の件のようなギリギリの経費削減が強いられるのも、無理のない話であろう。
「朝日は一番吸水性がいい」との声も
これまで朝日新聞の苦境に関しては、様々なメディアで報じられてきたが、今回は社員の福利厚生にまで経費削減のメスが入ったということで、その想像以上の困窮ぶりにネット上では多くの驚きの声が見られる。
そんななか、一部の層で注目を集めているのが、先述の社内報で補助制度廃止の理由のひとつとして挙げられていた「自社の商品を自ら購読することで朝日新聞の購読部数を支えるとともに、有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけ」という個所だ。これには「こじつけだ」との声があがるいっぽうで、「目線の高さに草」「朝日新聞みがあってよき」といった意見も。確かに、社員への福利厚生の一部を廃止するということで、会社側としてはウソでも申し訳ないといったノリで話しても良さような内容なのだが、なぜか妙にエラそうな物言いである。
「自社の商品を自ら購読することで朝日新聞の購読部数を支えるとともに、有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけ」
…後半はどう考えてもこじつけ。朝日新聞が赤字で「社員の購読を自腹化」の衝撃 https://t.co/AToJI1LzrZ #スマートニュース
— くろかもめ (@Black_Marines) February 26, 2021
「有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考える」
目線の高さに草— ぱおん系きしゃ (@Q0ve9414APL1c9w) February 26, 2021
打ち切りにした理由を、厳しいからとは言わず、「有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけ」にしてて草。朝日新聞みがあってよき
— ハイアット太郎 (@hyatt_taro) February 26, 2021
さらに「朝日新聞の価値を考えるきっかけ」という点に関しては、「逆に金を払ってまで読む価値がないと気づくかも?」といった意見が噴出するなど、朝日新聞に対するネット上での評価が如実に表れる格好に。なかには「朝日は一番吸水性がいい」といった、別の意味での価値を見出す声もあり、朝日新聞への不信もここに極まれりといった状況だ。
タダで読めていたのに…朝日新聞が赤字で「社員の購読を自腹化」の衝撃https://t.co/fXjnhAt7tw
社員が「自社の商品を自ら購読することで朝日新聞の購読部数を支えるとともに、有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考えるきっかけ」とする
おっと、有害無益だと気付いちゃうな
— 怪しい自転車リカンベントさん (@TriceQNT) February 26, 2021
「有料で購読している一般読者の視点に立って朝日新聞の価値を考える」
朝日は一番吸水性がいい。
液体をこぼしたときに重宝する。
特に乳幼児が漏らした排泄物の処分にはなくてはならない。#Yahooニュースhttps://t.co/loEgdBxgNf— EnemyOfPublicEnemies (@emporioarbitris) February 26, 2021
高齢層も含めたあらゆる年代で「ニュースはネットでチェックする」という習慣が、広く定着しつつある昨今。朝日新聞のみならず新聞業界全体が今後も苦境が続くことが予想されなかで、さすがの大手紙もネットへの移行が進んでいくものと思われるが、とはいえ「紙の新聞も残って欲しい」という声も少なからずあるだけに、なんとか踏ん張って欲しいところだ。
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