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なぜ日本人はワクチンに否定的?もたつく菅政権を尻目に中印露は「ワクチン外交」に全力、途上国の取り込み合戦へ=原彰宏

ジェネリック医薬品大国インドも中国に対抗

インドは、世界でも有数のジェネリック医薬品大国です。英国のアストラゼネカ社のワクチンをインド国内で製造し、それを発展途上国に積極的に提供しています。

前述のアフリカに初めて上陸したワクチンは「COVAXファシリティー」を通じて供給された、インドで製造されたものです。

インドのワクチンが世界を救う。モディ印首相の言葉です。インドも自国生産ワクチンを無償で、ワクチン確保が困難な国々に無償供与を行っています。インド周辺地域で存在感を増す中国に対抗する狙いもあり、安価なワクチンを武器に友好姿勢をアピールしています。

世界の薬局としてコロナに打ち勝つためにワクチンを供給する。ジャイシャンカル印外相の言葉です。なかでも中国が30万回分の無償提供を表明したミャンマーには、5倍の150万回分を寄贈しています。領土問題を抱えるネパールには100万回分を贈り、オリ首相から「自国民に接種を進める重要な時期に寛大な支援だ」と感謝の言葉を引き出したとあります。

インドにとってワクチン産業は世界シェアの6割を占めていて、単価も200ルピー(約280円)ほどと欧米諸国に比べ格段に安価で、各国が今後の調達コストを抑えられるメリットもあります。

国境での武力衝突が取り沙汰される中国とインドの関係ですが、ここにきて、武器をワクチに換えて、それぞれ発展途上億に存在感を与える戦いを繰り広げているようです。

周辺のアジア各国では、中国が近年、巨額の投資や経済支援をテコに経済圏構想「一帯一路」を推進し、影響力を強めている一方で、「借金外交」と言われる、借金返済の代わりに湾岸権益などを握るという荒業を展開していることが、非難されています。

インドは、コロナ対応に苦慮する途上国などへの積極的な協力をすることで、中国の影響力を食い止め、インドが穏健な大国であること示すことで、信頼醸成に役立てる意図があるようでもあります。

まさに中国とインドの、発展途上国の主導権争いが繰り広げられているのです。

トランプ政権下で新型コロナウイルス感染者拡大が止まらない米国はかなり弱っていて、他国の心配をしていられない今こそ、中国としてしては、その存在感を世界にアピールしたいところでしょうし、コロナ発生地という不信感払拭にもうって出たいでしょうし、インドとしては、経済で中国にいいようにされたアジアやアフリカ諸国に、これ以上好き勝手はさせたくないという思惑が働いているのでしょう。

インドにとっては、対中宣戦布告のような感じです。

世界人口第1位と第2位の大国同士の戦いに、そこにもう1つの大国、欧米が動けないときに世界制覇を狙っている国があります。

領土面積世界第1位のロシアです。

ロシアのワクチン外交がEUに混乱をもたらす

ロシアは、クリミア併合を強行して以降、世界の一部の国から“パーリア(嫌われ者)”とみられてきましたが、ワクチンが国際的な学術誌に評価されたことで、プーチン大統領にとってロシア製ワクチンの提供は困った国々をパンデミックから“救い出す”ロシアにイメージを刷新する絶好の切り札となります。

ロシア政府にとってワクチン外交は、欧州連合(EU)にさらに混乱をもたらすという好都合も生んでいると指摘する専門家もいます。

EUは必要な数だけのワクチンの調達に遅れが生じており、接種計画も想定通りに進んでいない中で、EU加盟国のハンガリーは、EUがまだ承認していないロシア製ワクチン「スプートニクV」の供給契約をロシアと結び、すでにその第1回分の供給を受けました。

欧米の製薬各社が開発し承認が得られたワクチンの調達を巡って経済力のある先進各国が争奪戦の様相を強めつつある中で、ブラジルやナイジェリア、アルジェリア、エジプトといった低・中所得国にとってはロシアと中国からのワクチン供給が頼みの綱となっているのが現状です。

中国やロシアは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生当初から、自国の外交上の存在感や影響力を少しでも高めようと医療物資を積極的に輸出し、各国を支援してきました。

感染拡大が深刻な国々にマスクや防護服などを送っていたのもその一環です。

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