世界の強国たちはワクチン外交に全力を出してきています。日本のワクチン政策はこれでよいのか。自国の接種すらままならない日本の未来が危ぶまれます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年3月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
遅れる日本のワクチン接種
「がんばります……」これは河野太郎ワクチン担当大臣が、記者団からの「一般の人はいつからワクチン接種できるのか」という質問に対して答えたときのセリフです。
記者団をじっと見て、引きつったような笑いをしていましたね。
河野大臣は思ったことが顔に出るタイプなのか、嘘がつけないのかも知れません。
日本はベルギーとドイツのファイザー工場からワクチンを輸入していますが、EU域外へワクチンを輸出する際には、EU側の承認が必要になります。
欧州におけるワクチン供給が逼迫(ひっぱく)していることから、EUが域内製造ワクチンを抱え込もうとしているからで、その結果、3月以降の日本への輸出に関しては、まだEU側の承認は得られていないのです。
3月以降にワクチンが供給されるかどうかは、今のところは未定だということです。
日本のワクチン接種スケジュールは、海外事情によるところが大きく、日本国内だけで決めることができないことがもどかしいです。
河野大臣としても、高齢者接種に関するスケジュール感を何も発しないわけにはいかず、さりとて断定もできずという、世論を意識しながらも、知事の要請にも配慮しつつも、現場の事情を考慮しながらの発言であることが、あの引きつった笑顔に表れているような気がします。
なぜ日本製ワクチンは完成しないのか?
そうなると「なぜ日本製ワクチンが開発されないのか」という問いにぶち当たります。
そのことに関しては、当メルマガの2021年2月3日第455号でも検証しました。よろしければ読んでみてください。ようは「ワクチンギャップ」と「ワクチンマインド」の問題になります。
「ワクチンギャップ」とは、技術的にも日本はワクチン製造に関しては世界に負けないものがあるにも関わらず、1980年代のワクチン副反応に関する集団訴訟で政府が賠償金を払うことになったことで、政府や官僚がワクチン開発に二の足を踏むようになり、製薬会社も、政府の後押しがないワクチン製造には非積極的になっていたことによります。
日本は幸いにもSARSやMARSといった世界的に流行したウイルス被害が拡大しておらず、ワクチンに対する取り組みや体制への危機感がなかったこともあります。
1980年代までは、日本でもワクチン製造には積極的で、ウイルス対策にも前向きでしたが、2000年代に至るまで、ワクチンは開発されてはきませんでした。製薬会社にしても、ワクチンを作っても儲からないのです。
政府支援がない産業構造が、ワクチン製造などのウイルス感染対策には非積極的にさせたわけですね。
保健所統廃合も、国の財政状況からもその存在意義が問われるのも仕方がないと言えば問題かもしれませんが、効率的という観点からだと優先度は下がります。
「ワクチンギャップ」というよりも「ポリシーギャップ」というものですね。
「ワクチンマインド」は、日本人の副反応へのアレルギーにあります。それを“過度”と批判するのもどうかとは思いますが、薬剤が日常生活に当たり前に存在する欧米諸国とは、やはり日本は異なる風土があると思います。
この副反応の取り扱いについては、後半で取り上げます。