ワクチン供給の現状
ロシアのワクチンは「スプートニックV」、世界30カ国以上で承認されています。
無効化したウイルスにコロナウイルス情報を入れる「ウイルスベクターワクチン」で、突然変異種が出ても、短期間で作り変えることができるのが特徴です。有効率「91.6%」という数字が認められたことで、世界的評価を高めました。
中国「シノバーク」社のワクチンは、世界53カ国で承認されています。死んだ病原体を使う「不活化ワクチン」で、トルコでは有効率「91.2」となっていますが、この有効率が、インドネシアでは「65.3%」、ブラジルでは「50.4%」と幅があるようです。
スプートニクVは一定の科学的評価を得たものの、中国製ワクチンの効果についてはほとんど何も明らかになっていません。英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)のフランソワ・エイスブール氏は、「ほぼ確実にわかっているのは、中国製ワクチンで死ぬことはないということだけだ」としています。
そして、米国のジョンソン&ジョンソンが、1回の接種で完了するうえ、冷凍ではなく冷蔵保管が可能なワクチンを開発しました。3月末までに2,000万回分を供給する方針で、米政府とは、6月末までに接種1億回分を提供することで合意しています。イギリスが3,000万回分、欧州連合(EU)が2億回分、カナダが3,800万回分、それぞれ発注済みで、貧しい国々にもワクチンを行き渡らせるための国際的枠組み「COVAX」を通じての注文は、5億回分だそうです。
日本は交渉が遅れていて、未だ協議中だとのことです。
ワクチン戦争で世界の勢力図が変わる?
世界保健機関(WHO)などの主導で共同購入したワクチンを公平に分配する国際枠組み「COVAX」の取り組みはあまり進展がなく、貧困国へのワクチン供給はほとんどスタートしていないのが現状のようです。
一方で、ワクチン外交は反発も招いていて、台湾は中国からのワクチンの輸入を禁止していますし、ウクライナはスプートニクVの受け入れを拒んでいます。
もっとも国家間対立が、背景にあるのかも知れませんね。
西側諸国は、こうしたワクチン戦争をあまり気にはかけていないとのことです。
しかし、パンデミック初期に中国がEU以外の様々な国に送った個人用防護具には一部、欠陥があったものの、特にアフリカの最貧諸国はそれでも最初に支援してくれた国として中国を強烈に記憶しているそうです。
人道的要因、ワクチンの普及こそがその国を復活させるという経済的要因、効果が確認されたワクチンを届けるという科学的理由に加えて、中国やロシアの動きをけん制するという政治的な理由からも、西側諸国は、「COVAX」を通じてワクチンを安価または無償で迅速に世界に普及させるという約束を果たす必要があるという指摘もあります。
もっと「COVAX」ウィ有効に活用して西側書屋が積極的に、発展途上国を支援しないと、「ワクチン外交」で中国やロシアに、存在感を強く増してくるのではないでしょうか。
1月20日に米国ではバイデン新政権が発足しましたが、新型コロナの最大被害国となった米国は、各国へのワクチン供給という部分では中国ほど存在感を見せていません。
今後の米中対立を考えると、対立の舞台は政治や安全保障だけでなく、ファーウェイを巡るハイテク産業、サイバーや宇宙など多岐に渡っている中で、ワクチンもその舞台となってくるようであれば、習政権はワクチン外交をいっそう進め、アジアや世界における影響力拡大を狙う状況にどう対応するのか、バイデン政権は大きな課題に迫られそうです。