現在、製造業の絶好調な発表が重なり、本格的な景気回復となりそうに思えます。しかし、この上昇相場には大きなリスクが考えられます。投資家にとって危険なサインを見逃さないようにしたほうがいいでしょう。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
コロナ禍でも製造業は絶好調!景気回復か?
2021年3月調査分の日銀短観が発表されました。大企業製造業の景況感指数(「良い」から「悪い」を引いたもの)はプラス5ポイントとなり、新型コロナウイルス蔓延前を上回りました。
一方で、非製造業はマイナス1ポイントと、二極化が鮮明になりつつあります。良かった業種、悪かった業種を以下にまとめました。
日銀短観まとめ(主観含む)
【好調】
電気機械
自動車
物品賃貸
通信
情報サービス
対事業所サービス【不調】
繊維
造船
電ガス
対個人サービス
宿泊・飲食 pic.twitter.com/Fhy56CBWky— 栫井駿介(つばめ投資顧問代表) (@tsubame104) April 1, 2021
タイミングを同じくして、米ISM製造業景況指数も発表され、こちらも64.7と基準とされる50を大きく上回りました。半導体不足が叫ばれるなど、世界的に製造業は好調なようです。
製造業が好調な理由は2つ
製造業が好調な理由は主に2つあると考えます。
1つは、コロナ禍での生産不足に対応するものです。コロナ禍では工場もストップしたため、供給が減少しました。一方でPCなどのIT機器をはじめとする製品の需要はむしろ高まりましたから、やがて需要に追いつかなくなります。製造各社は、ここにきて急ピッチで生産を行っているのです。これは、日銀短観において在庫の減少が続いていることからも確認できます。
もう1つは、消費者が他にお金を使う場所がないという状況です。コロナ禍で経済的に窮地に陥っていない人を除けば、給付金などで懐は潤っている状況にあります。しかし、それを使おうと思っても飲食やレジャーなどには使いようがありませんから、物を買うしかないのです。それがPCやスマホ、あるいはゲームということになります。
問題はこれがいつまで続くかということです。1つ目の「供給不足」については、やがて供給が追いつけば落ち着いてくるものと思われます。一方で、2つ目の需要の偏りに関しては、コロナが終わらない限り似たような状況が続く可能性があります。
そして、製造業は一般的に「シクリカル銘柄」と呼ばれ、景気後退時には大きく下がることから、これまで売られ株価は低迷していました。ここ最近でこれらの株価が回復したのは、景気回復を見越していた可能性があります。
製造業に関してはまだ割安感のある銘柄が転がっている印象です。もっとも、景気回復がこのまま続くかどうかは未知数ですから予断は許しませんが、長い目でみた時に強みを持つ商品があり、株価にも割安感があるならこの辺りで買っておくのも手かもしれません。それほど、製造業における力強さを感じます。