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中国企業の楽天出資、米国に詰められ「外為法で監視」と慌てて釈明。警戒感ゼロの日本政府に「情けない」失望の声

中国ネット大手・テンセントの子会社が楽天グループに出資した件について、日本政府はアメリカ側に対し、情報流出など安全保障上の問題が生じないか「外為法」にのっとり監視するとの方針を伝えたと報じられ、日本政府の「中国への警戒感の無さ」を嘆く声がネット上で溢れる事態となっている。

問題視されているのは今年3月に楽天が、日本郵政・テンセント子会社・米ウォルマートなど計5社を引受先に、第三者割当増資で計2,423億円を調達した件。テンセント子会社の出資比率は3.65%で、3月31日に657億円の払い込みを完了している。

外為法では、海外勢が日本の重要な企業の株式を取得する際に、持ち株比率で「1%以上」なら事前届け出が必要だ。ただし「非公開の技術情報にアクセスしない」「自ら役員に就任しない」などの条件を満たす純粋な投資の場合は、その事前届け出は不必要となる例外規定も存在する。

今回の件でテンセント側は事前届け出をしていないとのこと。楽天は「テンセントは純投資で、免除ルールをクリアしていると認識していた」と説明しているという。

外為法の審査を億劫がってスルーしたのが裏目に?

今回の報道で取沙汰されている「外為法」だが、実は2年前の2019年に改正されたばかり。その際に先述の事前届け出の義務に関して、従来まで10%以上だったのを1%にまで引き下げ、少ない出資額でも届出を義務付けるよう改正されている。改正された時期は、折しもトランプ前大統領が中国製品の関税を引き上げるなど、いわゆる「米中貿易戦争」が激しかった頃で、中国による日本企業買収の動きを見張るといった狙いが大いにあったとされる。

ただ、事前届け出の義務の厳格化に対しては、欧米のファンドから「投資活動を阻害するもの」といった批判もあったようで、そこで上記のような例外規定が後付けで設けられたという経緯があるようだ。

テンセント子会社の楽天への出資に関しては、当初3月29日に出資金の払い込みがされる予定だったものの、楽天は「外為法に基づく手続きの関係で、予定していた29日とは異なる日に払い込まれる可能性がある」との見方を示し、実際に数日遅れて払い込まれたという経緯がある。その際に楽天とテンセントは、外為法の審査が入ったかどうかについて「コメントできない」としていた。

ところが一部報道では、外為法の届出を巡ってテンセント側と複数の省庁の間で、非公式の話し合いが数回にわたって持たれた、とも伝えられている。その際にテンセント側は、先述通り「免除ルールをクリアしている純投資」という説明をしたものの、対する省庁側は事前届け出や審査が必要とも不必要とも明言せず、話を「聞きおく」といった態度に終始したという。

この省庁側の不可解なスタンスだが、事前届け出が必要か不必要かの判断、さらに届け出後に行われる審査を、あろうことか「億劫がった」のではという見方がされている。というのも、仮に届け出後の審査でOKを出したとして、その後に何か問題が起こった場合、太鼓判を押した国側の責任が問われかねない。また逆に審査でNGとした場合は、日本郵政も多額の資金提供をした楽天の資金調達が不調に終わることになり、その経営に大きな影響が生じる可能性も想定されるのだ。

要は、どちらを選んでも大きな意味や影響が発生する決断を、省庁側がどうにも持て余してしまい、その結果「スルーしてやり過ごそう」という対応になったという、正直かなり情けない話。しかし、アメリカ側がそんな玉虫色の決着を認めるワケは無く、今回の「釈明」に追い込まれたというのが実情のようだ。

政府の中国への「警戒感のなさ」に失望の声

今年3月の楽天への出資決定時は、とりわけ「楽天と日本郵政のタッグ」という点がクローズアップされがちだった日本国内の報道。ただ、出資元にテンセントも加わっていることを危惧する、いわゆる「テンセント・リスク」を訴える意見も一部のメディアからはあがっており、今回の顛末に対しは「案の定」「やっぱり」といった反応も多い。

そんな「テンセント・リスク」を訴える記事になかには、テンセントの楽天への出資比率が3.65%となったことで、会社法で認められている「帳簿閲覧権」により、楽天本体やその子会社の会計帳簿等が閲覧される可能性があるという、恐ろしい内容のものも。中国などの海外勢が、日本の企業に食い込まないように制定、さらに改正もされた外為法だが、実は如何様にも抜け道はあるという事実、その法令の脆弱ぶりを訴える声もネット上にはあがっている。

しかし、それ以上に多いのが「アメリカに言われるまでもなく対処しろ」といった、日本側の情けない対応を責める声だ。LINEのデータが中国や韓国に流出していると大騒ぎとなる最中に、中国企業からの出資を受け入れるという楽天の経営姿勢もさることながら、国や省庁のユルすぎる「中国への警戒感」にも、改めて批判が集中しそうだ。

Next: 「利益優先の企業達が日本と日本人を中国に売り渡しているのね」

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