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急落した金相場、押し目買い前にチェックすべき「異変」の意味。次の上昇トレンドは23年以降か=江守哲

投資戦略と考え方

金相場は大きく崩れている。これまでの上昇基調は明らかに反転した。結果的に1,900ドルを明確に超えられなかったことに加え、ドル高基調が鮮明になったことが背景にある。ドル指数の週間上昇率はここ約9カ月で最大であり、ドル以外の通貨所持者にとってドル建ての金の魅力が減退している。ただし、ゴールドマン・サックスやコメルツバンクは、金相場は回復に向かうとの予想を示している。

コメルツバンクは年末時点の予測を2,000ドルで維持している。また、短期的には売り圧力がさらに強まる可能性があるものの、歴史的にインフレ高進は貴金属にとっては買い材料になるため、今回の下げは買いの好機とみなされ、どこかの時点で安値拾いが入るとの指摘もある。しかし、それは金融市場が落ち着かないと難しいだろう。

実際に貴金属相場は軒並み大崩れである。特にひどいのがプラチナとパラジウムである。このような相場になると、持ち直しには時間がかかる。長期投資を考える場合でも、慌てずに底値を確認してからゆっくりと拾うほうがよさそうだ。

それにしても、今回の金相場の下げはまさに「急落」というにふさわしいだろう。値動き的には1,875ドルを割り込んだあたりから相場自体は下げ始めていたのだが、これがFOMCをきっかけにまさに大崩れといった様相である。

そして、1,815ドルにあった重要なサポートも割れたことで、中期的なトレンドは崩れたといえる。これで3月のダブルボトムの形成が否定され、もう一度底値を探る展開も想定される状況にになっている。

金相場に起きた異変

今回の下落はドル高が影響しているが、そのきっかけとなったFOMCでのFRBの見通しは、金融政策方針の明らかな変化を示している。

結局のところ、FRBは「インフレは一時的」と繰り返すものの、公式な経済のリスク評価はタカ派色が強まっていることは確かである。インフレ警戒であれば、金利が上昇しても実質金利が低下し、金価格が上昇することになる。しかし、それも起きていない。むしろ、米長期金利は低下している。

もっとも、現在市場で起きていることは、これまでと大きく違う。それは、短期金利が上昇した点である。FRBが行っている金利調整は短期金利である。

したがって、今回のFOMCを受けた短期金利の変動は、まさにFRBの変貌ぶりを素直に反映しているといえる。米短期金利の上昇が、ドル高に直結し、その結果、金も売られているというわけである。

金利が上昇しても、インフレ率が上昇し、実質金利が低下すれば、金相場は上昇することになる。しかし、今は市場はそのあたりをほとんど見ていないことになる。つまり、ドル高を金売りの材料としているわけである。

2013年のテーパリングの際の金相場の動きを振り返れば、利上げの前に議論されるであろうテーパリングが金相場を抑制することは明白であろう。したがって、ドル高基調とテーパリングの議論が進むうちは、金相場は上昇しづらい期間が続く可能性がある。

さらに言えば、当時の金相場が明確に底打ちし、反転して上昇に転じたのは、実際に利上げが開始されてからである。利上げ開始は2015年12月だったが、これまでの金相場の上昇基調の起点はまさにこの時点である。

したがって、今回もそのような可能性もあることを十分に理解したうえで、今後の金相場を見ていく必要があろう。

Next: 次の金相場上昇は23年に入ってから?今後の展望は

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