見通しが立たない3つの要因
理由として、以下の3つが挙げられます。
1. 仮免許状態
2. 安価で簡便な診断方法の普及
3. 競合の動き
それぞれ、解説していきましょう。
<判断が分かれた理由その1. 仮免許状態>
まずは、新薬「アデュカヌマブ」そのものの問題。
米食品医薬品局(FDA)から承認を得たアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」の評価が定まっていない点です。
将来のブロックバスター(年間売上高10億ドル以上の新薬)として期待がある一方、効果を疑問視する声も残っています。
今回の承認で、有効性が完全に認められたわけではない点には留意しなければなりません。FDAの承認は、正式には「迅速承認」であり、上市後も臨床現場での有用性を確認する試験が必要です。
そして、その試験の結果によっては承認取り消しもあり得る点です。これが、エーザイ認知症新薬の承認は「仮免」だと言われる所以です。
<判断が分かれた理由その2. 安価で簡便な診断方法の普及>
2つめは、取り巻く環境の問題です。
前提として「安価で簡便な診断方法」が普及している必要があります。つまり、「アデュカヌマブ」を使用する前の段階である、アルツハイマー病の診断が簡単に行われている環境が整っていることです。
これに関しては、時を同じくして6月22日に島津製作所が、血液数滴からアルツハイマー病に関連する物質を調べられる検査機器の販売を始めると発表しています。脳内のたんぱく質の蓄積が血液で確認できるようになると、より多くの人が調べられるようになり、投与の対象も増えます。
島津製作所の検査機器のように、他にも事前に察知できるような検査が普及することは今後の課題です。
こういった、検査機器が普及の前提があってこそ、病状が早期の段階で新薬「アデュカヌマブ」を投与することができるのです。
このあたりの環境が整ってくれば、『ブロックバスター』(巨額な利益が見込める薬)になるポテンシャルがあると言われています。