地銀銘柄に有効な3つの投資戦略
以上を踏まえて、今とても割安な地方銀行への投資はどのような考え方なら良いかということを考えてみます。
<戦略その1:バルク買い>
1つは、バルクで買うということです。 バルクとは要するにかご買いです。 先ほどUBSの地方銀行に投資するファンドを紹介しましたけれども、すでに募集を停止していてファンドとかインデックスで地方銀行を買うというのは今はできない状態です。 しかしこのバルクの考え方を使えば、少しずつ地方銀行で有名なところを適当に分散させていくつか買っておくということをすれば、同じ地方銀行ファンドのようなものが自分でもできるということになります。 今は1株から株を買えたりもしますから、そういった戦略で、とにかく今は割安で、割安なものは明確な要因がなくてもなんとなく上がっていくということもあったりするわけです。 少なくともそこから下がる余地は限定的な部分もあると思います。従って、インデックスを目的としてバルクで買うという方法はありだと考えます。
<戦略のその2:SBIが出資しそうな地銀を探す>
2つ目はもうちょっと踏み込んでみて、SBIが狙いそうな地銀を探すことです。
SBIの出資ないし株の購入によって株価が上昇するという短期的なリターンが狙いやすくなる可能性があるわけです。 SBIが狙う銀行は結構明確で、すでに財務状況が苦しいところに狙いを定めています。なぜそうしているのかというと、財務状況が苦しいところに、じゃあ私がちょっとお金出してあげますよという風に言えば、その銀行としては飛びついてきやすく恩も売りやすいのです。
SBIとしては、地方銀行に対して例えば有価証券運用商品を売ったりだとか、あるいは地方銀行というと、地方のおじいちゃんおばあちゃんや地元企業などの優良顧客を抱えているので、そこにSBIの投資信託などの商品を地銀を通じて販売するということもあるでしょう。SBIが顧客を紹介してもらって、直接販売するということもあるのではないかと思います。これがあるからこそ、SBIとしては買った地銀株が上昇しないでも、十分にこの事業によって利益を得ることができるのです。餌をやるためには、まだ余裕がある銀行に出資を行ったところで大して感謝されないので、立場の優位性はないわけです。一方で今資本が足りないという銀行だったら、十分に感謝されてその後の付き合いもやりやすくなるわけです。
従って、狙うべきは自己資本比率の低い、財務の弱っている銀行ということになります。
自己資本比率が低い銀行を見ると、明らかにSBIが出資しています。これらの苦しい銀行を優先的に買っていれば、もしかしたらSBIに拾われて、瞬間的にかもしれませんが株価が上昇する銀行も現れるかもしれないというところがあります。
<戦略のその3:砂金探し>
3つ目に砂金探しです。
地方銀行と言うと、やはり先細り感が非常に強く、しかも経営としては必ずしも洗練されているとは言えない状況です。 今後、利益を増やしていくとか、株主還元を強化するとか、そういったことは正直あまり考えていない人たちです。
というのも、私自身が証券会社時代に地方銀行の担当をしていて、そこの経営企画の方とお話しする機会もかなりあったからです。 地方経済を活発化させるというようなことはよく言うのですが、株主に還元するために銀行をどう経営していくかということに関しては、正直かなり能天気な人たちが多かった印象です。
だからこそ、割安に評価されているのですが、そんな中でキラリと光る砂金を見つけることができれば、今は割安でもそこから経営を伸ばすということになれば、例えば今0.2倍で評価されているPBRが1倍くらいまでは伸びるかもしれないという期待が持てます。
この1つとして挙げられたのが、実はかつてのスルガ銀行だったわけです。 スルガ銀行は他の銀行が手を出さない個人向けローンを積極的にやった結果、地方銀行ではまれに見る高収益体質でした。
しかし、皆さんご存知の通り不動産ローンに関して、預金残高の改ざんなど不祥事がありました。 それによってこの成長戦略も取れなくなったというところもありますし、その他の地方銀行にとっても、変わった戦略をとるのに及び腰になる事例となったのではないかと思います。
もちろん、そんな中でも気を吐く銀行があればということで私は探していきたいと考えております。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年7月13日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。