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サニーレタスの水で転んで後遺症、店に2180万円の賠償命令。悪いのは客か店かで世論二分。訴訟リスク対策が価格上昇に繋がる懸念も

スーパーの店内で転んだ客が、店側に損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁が店側に2100万円余りの賠償を命じたと報じられ、大きな波紋を呼んでいる。

報道によると、訴えを起こした60代男性は「サニーレタスから垂れた水で床がぬれていたのに掃除をしていなかった」と主張。それに対して店側は「床がぬれていたとは考えにくく、滑りやすいサンダルをはいて急いで買い物をしていたのが原因だ」と、真っ向から対決していた模様。

28日の判決で東京地裁の品田幸男裁判長は「サニーレタスの水で床がぬれる可能性があるとわかっていたのに、店側は一定の間隔で掃除をするなど転倒を防ぐための対応をしていなかった」と店側の落ち度を指摘し、店側に2100万円余りの賠償を命じたという。

注目を集める高額な賠償額は妥当なのか?

スーパーなどの小売店に対して、いわゆる「安全配慮義務」を怠っていたと訴える裁判といえば、昨年末にもかぼちゃの天ぷらで滑ったケガに対して賠償を命じる判決が、今回と同じく東京地裁で下されたばかりだ。

床に落ちていたかぼちゃの天ぷらで足を滑らせて、靭帯損傷などのケガを負った客側が、慰謝料115万円を含めた約141万円の賠償を求めたこの裁判は、「レジ前の通路に天ぷらが落下しないように安全確認を強化すべきだった」と店側の過失を指摘。そのいっぽうで客側も「天ぷらに気づくこともできた」と、過失の割合は5割とされ、判決は客に対して57万円の支払いを命ずるという結果に。なお店側は控訴し、裁判はまだ続いているという。

今回のサニーレタスの件だが、客側の請求額は約1億225万円、賠償を命じられた額も2100万円余りと、かぼちゃの天ぷらの件と比較するとべらぼうに高額。そういったこともあり、ネット上では客側を「訴訟ゴロ」呼ばわりする声も一部で見られる。

ただ今回の件に関しては、先のかぼちゃの天ぷらの件とは異なり、判決のなかで客側の過失はこれといって指摘されなかったようで、安全管理義務に違反した店側がほぼほぼ悪いといった判断がなされたようだ。

そのうえで、客側が企業経営者のため、ケガにより休業を余儀なくされたことへの補償、さらに客側の左肘関節に後遺障害が残ったことも、賠償命令の金額に考慮されたようだ。休業補償はともかくとして、例えば交通事故で後遺障害が残った場合、1,000万円台の賠償もザラにあることも考えれば、今回取沙汰されている賠償額に関しても、法外に高いものだとは一概には言えないようだ。

判決の「様々な影響」を懸念する声も

ただ、ネット上では賠償額の多寡以外に、今回の判決が及ぼす様々な影響を心配する声も多い。

なかでも、やはり多いのが「絶対にマネする奴が出てきそう」といった声。当たり屋ならぬ「滑り屋」が全国のスーパーに続々と現れ、同様の訴訟が頻発するのではという意見だ。さらに店側も、そういった訴訟リスクを回避すべく、過度な対策を取らざるえなくなるのではといった推測も。今回の件で言えば、足元の滑りやすいサンダル履きでの入店は断られてしまうといった、冗談のような状況も考えられるというのだ。

いっぽうで、店側が安全配慮義務の遵守を過剰に意識することで、サービスダウンや価格アップも考えられるのでは、といった声も。今回問題になったサニーレタスに関しては、鮮度アップのために店頭に並べる前に冷水に浸ける「蘇生」という作業を多くのスーパーで行っているようだが、今回のような訴訟沙汰への発展を考えればそれを止める、あるいはサニーレタスに限らずそういった危険性が考えられる商品は取り扱わなくなることも、考えられるだろう。

さらに、床が滑らないように清掃の頻度をアップさせる、さらに水が出る青果や油を含んだ総菜などは、すべてしっかりと包装するといった対策をとれば、その作業分の人件費が当然かさむ。さらに、不意な訴訟沙汰に備えて賠償責任保険などへの加入もマストとなれば、店側への負担がさらに増えていくわけで、その分が商品の値段に跳ね返ってくるのは想像に難くない。

大手のスーパーならともかく、中小規模のチェーンや個人経営の店なら、1,000万円台の賠償が経営に与える影響は甚大。今回の判決を受けて店側が控訴するかどうかは、各社の報道を見るにまだ不明のようだが、今後どのような顛末を迎えるのか、気になっているという方はかなり多いようだ。

Next: 「清掃コスト(人件費)があがることは、結局消費者の不利益よ?」

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