テニス選手「失踪」は迷宮入りか
この問題が表ざたになってからは、さすがにこの件については一切報じられず、インターネット上で検索もできない状況にあるという。
この問題を突っ込まれて困るのは、中国政府である。外務省の趙氏は23日の会見で、外務省ホームページの会見録に関連質問が掲載されていないと指摘され、「すべての文字は収めていない」と釈明するなど、ごまかしに終始した。
そのうえで、海外で懸念表明などの反応が相次いでいることに対し、「一部の人たちに悪意のある宣伝をやめるよう望む。政治問題化してはならない」としている。
明らかに動揺しており、この問題の根の深さをうかがい知ることができる。
人権団体が黙っていない
しかし、黙っていないのが、人権団体である。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、IOCのバッハ会長が彭選手とテレビ電話で会話して無事をアピールしたことについて、「中国政府のプロパガンダを助長してはならない」と批判する声明を出した。
同様に、女子テニス協会(WTA)も「テレビ電話で懸念は解消できていない」と断じている。それはそうであろう。中国政府やそれに加担しているIOCのやっていることは、まさにプロバガンダだからである。
HRWは「性暴力という重大な告発をする選手を犠牲にし、中国政府の説明をうのみにするとは驚き」と、IOCの対応を疑問視している。
さらに「他の関係者が彼女と連絡を取れない中、テレビ電話がどのように準備されたかをIOCは説明していない」とし、IOCと中国との協力関係に不信感をあらわにした。
そして、「IOCは選手の権利と安全を侵害する、最たる存在である中国との関係を大切にしているようだ」とやり玉にあげ、中国政府が彭さんの問題でメディアやインターネットの検閲を継続している対応も非難している。
女子テニスツアーを統括するWTAは、この問題について、中国のトーナメント不参加の可能性に触れつつ、透明な調査と、彭さんの健康と安全の保証を求めた。
現在は、これまで以上に人権が尊重される時代である。そのような時代の中で、昔のドラマや映画の話のようなことが、いまだに起きているのが中国なのである。