東京五輪の経済効果・経費詳細が判明しないまま、日本オリンピック委員会は札幌冬季五輪の招致に動くとしています。また、この国では、過去の五輪で優秀な成績を収めた者が、その後の五輪運営にどっぷりつかり、一生オリンピックで飯を食っていこうとするケースが恐ろしく多いことにも辟易とさせられます。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2021年12月5日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
東京五輪の負債を押し付け合う東京都と政府。経済効果は検証されず
年末になり、喉もと過ぎてすっかり話題にならなくなった東京五輪の大赤字の負担を巡って、いまごろ東京都と国との間で、押し付け合いの大バトルが展開しているといいます。
都の負担が現状では1.5兆円弱、国の負担が1.3兆円強ですから、当初の「コンパクト五輪」の開催などというコンセプトは遠い彼方に消えていったことだけは間違いない状況です。
また2017年当時に東京都で試算された経済効果は、2013年から20年の実施までに21兆円。加えて、2030年までの10年間で、11兆円のレガシー効果を見ていました。
それが実際に1年遅れで実施してみれば、このメルマガでも11月にお伝えしたとおり、7~9月期GDP速報値は前期比年率3.0%減で、五輪の経済効果は今年に関してはまったくなかったと言っても過言ではない状況になっています。
同様の試算を行った金融系シンクタンクや御用学者の類も、実際の効果がどうだったのかはまったく詳細分析をしておりません。
言ったもん勝ちの言いっぱなし状態が続いています。
今度は札幌で冬季五輪?
しかし、そんな中にあって、11月29日に札幌市がこともあろうに2030年の冬季オリンピックの招致を目指して大会概要案を発表し、ネット上では相当な驚きをもって見られています。
しかも日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は、「招致に向けて全力で取り組みたい」と言い放ったわけですから、開いた口が塞がらない状況です。
※参考:札幌五輪「実現に向けて全力で」 山下JOC会長:北海道新聞 どうしん電子版(2021年11月30日配信)
山下会長は、東京2020大会はスポーツと社会のあり方を考える大きな契機となったと言っています。
それならばもう、この坂道を転落するように3等国へと落ちぶれていくこの国で、五輪の開催を考えることなど一切やめるべきであって、また同じ失敗と巨額の税金を無駄使いすることにどれだけの国民の承認を得られるのかがひどく気になるところです。