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なぜソフトバンクG株は年初来30%も下落?「割安」評価は虚構、それでも孫正義の目利きに期待できる理由=栫井駿介

ビジョン・ファンドの時価はどうやって決まる?

では、ソフトバンクのビジョン・ファンドの時価はどうやって評価されているのでしょうか。

上場しているものは市場取引価格で見れば良いということになりますが、他のものについては「取引事例法」というものがあります。未上場の会社には、一般的に「ラウンド」というものがあり、その成長段階に応じてベンチャーキャピタルなどがお金を入れていきます。 基本的にはその企業が成長していくにつれて入れるお金も多くなっていき、その直近の評価額を基準にするのが取引事例法です。

また、その企業と似たような企業のPERやPSR(売上高倍率)、EV/EBITDA倍率などから算出する「マーケットアプローチ」もあります。

最後に「インカムアプローチ」という、いわゆるDCF法で、将来のキャッシュフローをシミュレーションして現在価値に割り引くものがありますが、これは将来のキャッシュフローをある程度正確に予測できないと意味がないので、実際にはそれほど使われていないと思います。

この分類の中で、市場取引価格、取引事例法、マーケットアプローチの3つに関しては、金融環境、すなわち市場にどれだけお金が余っているかということに左右されてくるわけです。

上場企業の株価については、特にソフトバンクが出資しているのは新興企業なので、相場が良い時はPER100倍にもなったりしますが、悪い時は当然それも下がってきます。 そうなるとビジョン・ファンドの持ち株価値も下がってきます。

取引事例法は、ベンチャーキャピタルがどれだけお金を持て余しているかによります。お金を持て余している時はどんなに高い価格であっても、とりあえず突っ込んでおけというような形で評価価格はどんどん上がっていきますが、逆にお金が無い時にはどんどん渋くなります。

マーケットアプローチでは、上場類似企業の株価が下がると、それに伴って低く評価せざるを得ないという部分があります。

これらによってソフトバンクのビジョン・ファンドの評価額というのは変動しやすいというところがあります。

しかも金融環境が今、金融緩和の相場が佳境を迎えていて、FRBがテーパリングを想定より早期に行う動きを見せています。

ビジョン・ファンドの評価に関しては明らかに逆風です。

金融環境とソフトバンググループは運命共同体

評価が下がるといっても一時的なもので、投資している企業が成長しているなら含み損になっても持ち続けていれば、やがて上がるのではないかというようにも見えます。

いまソフトバンクグループに投資している人は、そのNAVに対する時価の割安感で投資していると思いますが、このビジョン・ファンドの時価評価が下がるとNAVも低下します。

となると、ディスカウント率47%というのもあまり意味の無いものとなってしまいます。

それから、エグジット、つまり売却が難しくなるのです。エグジットするにはIPO市場やベンチャーキャピタル間の株式の売買が潤沢になっていないと簡単には売れません。市場が悪化すると、これが難しくなってきます。

ソフトバンクのビジョン・ファンドは外部の投資家からお金を集めています。その外部の投資家には結構高い配当を支払わないといけないことになっています。

持っている株が売れているうちは、そこから支払えばいいのですが、売れなくなると支払いが苦しくなり、借金をして支払わなければならないということになるかもしれません。

そして、ビジョン・ファンドが成果をあげていないということになると、追加の資金集めも当然難しくなります。

資金がないということになると新たな投資先への投資ができなくなるという悪循環に陥ってしまう可能性があるわけです。

これらの一連の流れを見ていますと、ビジョン・ファンドの状況というのは金融環境が悪化すればするほど厳しくなります。

つまり、金融環境とソフトバンクグループは中期的には運命共同体で、しかも外部投資家を入れるというレバレッジをかけていますから、上下動しやすいという環境がソフトバンクグループの中にあるわけです。

相場の混乱があるとソフトバンクグループの株価が大きく下がるということになります。

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