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「ロッキン」千葉へ会場変更、茨城県民は経済&精神的に大ダメージか。フェス旧会場付近への“延伸”計画を抱えるひたちなか海浜鉄道を心配する声も

毎夏行われている国内最大規模の屋外音楽フェスティバル「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」(ロッキン)が、今年から千葉市に会場が変更されると報じられ、大きな反響を呼んでいる。

2000年より毎年夏に茨城県ひたちなか市の「国営ひたち海浜公園」で開催されてきたロッキン。3年前には250のアーティストが出演し、5日間で過去最多となる33万人余りの観客が訪れた実績もあるフェスだ。

ところが去年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって開催が中止に。運営側は開催地について検討を進めた結果、今年は千葉市中央区にある「蘇我スポーツ公園」に会場を変更することを決めたという。

変更の決め手は“動線確保”と“密回避”

ロッキンの総合プロデューサーである渋谷陽一氏が「正直言って、経営的にもギリギリのところに私たちは立っています。もう中止や赤字覚悟のフェス開催は困難です。」と、公式サイト内でコメントしているように、新型コロナ感染拡大のあおりを大いに受ける格好となっている音楽フェス。

また昨年9月には愛知県常滑市で開催された「NAMIMONOGATARI2021」が、コロナ対策が不十分なまま開催されたとして大問題となるなど、野外フェス開催に対する世間からの視線も厳しくなっているのも実情だ。

そんななか、今年のロッキンの会場に決まった蘇我スポーツ公園だが、こちらはロッキンの企画制作を担うロッキング・オン・ジャパンが、毎年ゴールデンウィークに開催している「JAPAN JAM」の会場として2017年から使用されている、いわば勝手知ったる場所。

また会場の構造上、ひたち海浜公園だとステージからステージに移動する観客の密が避けられない反面、蘇我スポーツ公園の場合は観客がステージを移動する必要がほとんどなく、動線が広く密になりにくい点も、会場変更の決め手となったようだ。

実際JAPAN JAMだが、2020年はコロナ禍により早々に中止が発表されたものの、2021年はお隣の東京都で緊急事態宣言が発令され、さらには地元FM局であるbayfmが主催から降りるといった事態もありながらも開催された実績が。その際は来場者数を抑えたうえで、アルコール提供禁止やマスク着用義務化、歓声やハイタッチの禁止などの感染防止策が徹底され、その甲斐もあってかクラスター等の発生などもなく終わっている。

茨城県民には経済的にも心情的にも甚大な影響が?

ネット上では、フェスの灯を絶やさないためにも、今回の会場変更を前向きに捉えるといった反応がほとんど。そのいっぽうで、今年から開催地ではなくなる茨城県に対しては“当然の結果だ”といった声が溢れている状況だ。

そういった反応も、昨年ロッキンが中止に追い込まれた経緯を振り返れば無理のない話。昨年も国営ひたち海浜公園にて行われる方向で準備が進められていたロッキンだったが、開催まで1か月少しという押し迫ったタイミングで、地元の医師会から開催による感染拡大を懸念する旨の要請が。その内容があまりにも具体性のないいわば実現困難な内容で、さらにそれを主催社のひとつだった地元FM局に捻じ込むという手段をとったことも、当時大きな批判を呼ぶことになった。

【関連】ロッキン中止で批判集中の茨城県医師会、「ワイン会クラスター」事案で垣間見せた隠然たる影響力で地元メディアを屈服か

いわゆる田舎特有の頑迷固陋な勢力によるフェス潰しという捉え方も多分にされているこの一件だが、今回コメントを発した総合プロデューサーの渋谷氏も、その文中の冒頭で「ここまでやっても開催は受け入れてもらえないのだ、という大きな困難を感じました。」と語るように、その顛末には今でも納得がいっていない様子。それだけに今回の開催地変更を“ロッキンは茨城県を見限った”と受け取る向きは結構多いようで、今回の件を受けて地元民からは医師会への怨嗟の声も改めてあがっている状況だ。

もっとも渋谷氏も、今後の国営ひたち海浜公園での開催に関して「そのひたちなかとロック・イン・ジャパンの歴史をつなぐためにも、25周年、30周年といった年でのひたちなか開催を模索したいです。」と、決して茨城県との縁が切れるわけでないとコメントしている。ただこの内容だと、今後茨城県での開催は節目のみで毎年の開催は想定していない、とも捉えることも可能である。

ちなみに昨年の中止に伴って、税収では約3億円もの減少、さらには得られるはずだった約77億円もの経済効果をフイにしたとの試算もあるほど、ロッキンはこれまで地元経済に多大な貢献をもたらしてきたという側面も。さらに地元を走る「ひたちなか海浜鉄道」の湊線が、2024年春に国営ひたち海浜公園方面への延伸する予定で、昨年その事業許可を取得したばかりという話も。これがもしロッキンによる集客もある程度アテにしたものであれば、少なからず計画に狂いが出ることも考えられ、鉄道ファンからは心配の声があがっている状況だ。

茨城県といえば、毎年発表される「都道府県魅力度ランキング」において最下位が定位置になっていることでもお馴染みだが、ロッキンから去られてしまった今回の件を受けて、地元の方々からは「唯一茨城が日本全国に誇れるイベントだったのに」「また茨城の魅力度下がる」との声も。茨城県民にとっての経済的かつ心情的な“ロッキンロス”は、今後も当分は続きそうだ。

Next: 「33.7万人が来なくなるから茨城の経済損失すごそう」

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