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ロッキン中止で批判集中の茨城県医師会、「ワイン会クラスター」事案で垣間見せた隠然たる影響力で地元メディアを屈服か

国内最大級の野外音楽イベントである「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」が、茨城県医師会からの要請を受けて中止になったと報道され、大きな波紋を呼んでいる。

茨城県ひたちなか市にある国営ひたち海浜公園にて、今年は8月7~9日と同月14・15日の5日間開催が予定されていたロッキン。運営サイドはステージの数を例年の7から1に減らし、参加者も半分以下にまで絞るといった対策を取り、開催に向けて準備を進めてきたものの、開催まで1か月少しというタイミングで、茨城県医師会から新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する旨の要請があったようで、それが中止の決定打となったようだ。

この中止決定を受けて、RADWIMPSの野田洋次郎さんが「『ふざけんな』という気持ち」「準備する機会与えてほしかった」とコメントするなど、アーティストからは憤り、あるいは無念の声が多くあがっている。なお、今回の中止によって発生する経済損失は、とある試算によると77.3億円にものぼるとされる。

隠然たる県医師会の「影響力」

今回の中止決定によって、オーディエンスからの批判を集める格好となっているのが、中止の要請を行った茨城県の医師会だ。

具体的には、ロッキン自体が2000年からほぼ毎年開催されており、今年の開催日程も6月1日に発表されていたにも関わらず、医師会からの要請があったのは開催まで1か月ちょっとという押し迫ったタイミングだった点。さらにその要請も、フェスの総合プロデューサーを務める渋谷陽一さんが「その解釈は余りに多様で基準が曖昧」「包括的な要請」だとコメントするように、あまりにも具体性のないザックリした内容だった点に、多くの批判の声があがっており、ニッチもサッチもいかないタイミングで実現困難な要請を出したことが中止に繋がった。要はフェスを潰したかったのかとの見方も広がっているほどだ。

さらに医師会が中止の要請を、フェスの主催である茨城放送に出した件に関しても、様々と取沙汰されている。ロッキンの主催は、2016~2020年まで(2020年は中止)は都内のFM局であるTOKYO FMが担っていたが、今年からは地元FM局の茨城放送に変わっていた。中止要請を主催社に送るというのは、一応のところは筋の通った話ではあるのだが、ネット上では「地元メディアだから県医師会としても捻じ込みやすかった?」「東京のラジオ局だったら同じように直談判したのかな」との声もあがる。

ただ各県の医師会が、その地方にどれほどの影響力を持っているかどうかは、部外者からはなかなか分かりづらいもの。そんななか、今回の出来事をきっかけに改めて注目されているのが、昨年末に茨城県内で発生した「ワイン会クラスター」と、それを巡る県の対応だ。

2020年12月に茨城県つくば市で発生した会食によるクラスター。参加した37人のうち17人が感染したというこの件だが、実がこの会食はある医師が「ワイン会」として開いたホームパーティーで、感染者には医師も含まれていたというのだ。

ところが、その直後の茨城県による感染状況の発表では、その感染した医師について「自営業」だと発表。後に大井川和彦茨城県知事が「大いに反省すべき。甚だ正確性を欠く公表内容だった」と謝罪に追い込まれる事態となった。当初「自営業」と発表された際、医師側からそういった要請があったかどうかは不明だが、少なくとも県サイドにある程度の「忖度」をさせるほどの影響力を、医師側は持っているようなのだ。

そういったローカルとはいえ隠然たる影響力が、今回に関してはロッキンの中止に向けられた形に。地元局である茨城放送としても、そんな地元の医師会からの要請とあれば無碍にはできず、相当に重く受け止めてしまったのでは、というのは想像に難くない。

「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」サイト内にある先述の渋谷陽一さんによるコメントには、医師会の代表が茨城放送に要望書を渡した際のことを「そこでフェスに対する要望書を茨城放送の代表に手渡され、受け取ったところを写真に撮っていかれました」と、かなり細かな状況まで書かれているが、そんな自らの「影響力」を誇示するような一連のふるまいに関しても、批判の声が集まっている状況。ちなみに今回の件で、茨城県医師会には抗議の電話が相次いでいる模様で、通常業務にも支障が出ているようだ。

五輪には要請を出さない県医師会のダブスタぶり

このように、多くのオーディエンスから「納得できない」との声があがる今回の件だが、より多いのが「じゃぁ、なんで五輪には要請を出さないの?」という意見だ。

茨城県内では、男女のサッカー競技が茨城カシマスタジアムで11試合行われる予定となっている。ところが、東京都内で4度目の緊急事態宣言が発出されるに至り、茨城県の大井川和彦知事は8日に「観客を入れてというのは理解をいただくのは難しい」と、観客を入れての開催に対して難色を示している。いうなれば、今まさに無観客か否かを巡って議論が進んでいるところだ。

しかし、茨城県の医師会は県内での競技開催に対しては要請を出さないようで、その言い分は「五輪の開催や観客の有無についてはIOCや国で色々議論されています。他にも様々な団体からも要請や意見が届いていると思います。そういう状況のなか、このタイミングで茨城県医師会が東京五輪に対して要請を出すというステージにはありません」というもの。この医師会の姿勢に対しても、ネット上からは「ダブスタ」といった批判の声が寄せられている。

コロナ禍の危機的な状況であっても、五輪のように利権で煮しめたようなイベントが特別視されて開催が強行されるのに対して、そういった後ろ盾のないロッキンのようなイベントは、あえなく中止に追い込まれてしまう。そんな明らかな不整合ぶりをこうも見せつけられては、国民の間で不信と怒りが募るのも無理もないところだろう。

Next: 「もう野外フェスは茨城県でやらない方がいい」

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