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中間選挙前にバイデン自滅か。無理なインフレ抑制で米国「不動産バブル」再び崩壊へ=斎藤満

QT(量的引き締め)まで示唆

消費者物価の急騰は夏場の個人消費を圧迫し、11月には前年比6.8%と、39年ぶりの高騰を見せました。2%のインフレ目標を大きく上回る現実に直面し、地区連銀総裁の中にはインフレ抑制を主張する声が高まりました。

それ以上に、ホワイトハウスがインフレに対して強い警戒感を持ち、「バイデン政権にとってインフレ抑制こそ最優先課題」と言わしめたことです。

当然、政権からFRBに対して、インフレ抑制のための金融政策対応が求められたと見られます。

実際、パウエル議長やブレイナード理事の発言は、バイデン政権のインフレ抑制姿勢が明確になったあと、明らかに言い方が変わりました。FRBも突然インフレ警戒型に姿勢が変わりました。

これがテーパリングの11月開始の誘因となり、さらに1月からそのペースを倍加させました。

そればかりか、前回2013年の緩和修正時はテーパリング終了から利上げ開始まで1年余り時間をかけたのですが、FOMCメンバーによる直近の金利見通し(ドット・チャート)によると、22年3月にテーパリンクが終了する同じ年に3回の利上げを予想し、翌年もさらに3回の利上げを予想しました。3か月前の予想からは大幅に利上げ予想が前倒しされています。

それだけではありません。通常は利上げがかなり進んだ段階で検討される「量的引き締め(QT)」について、ウォラー理事はまだテーパリングが始まったばかりの段階で、インフレ抑制のために、QTの議論も必要と発言しています。

これまでの時間をかけた段階的な緩和修正、引き締め転換が、今回は政治の圧力もあってかなり急ピッチで進みそうな状況となっています。

住宅バブルは大丈夫か?

FRBが引き締め転換を急いだ時に心配なのが、米国住宅市場でのバブル崩壊リスクです。

ケース・シラーのデータによると、米国の住宅価格は9月に前年比19.1%の上昇と、かつてのリーマン危機前夜を上回る上昇となりました。住宅在庫が不足し、供給不足のために価格が高騰している面がありますが、この価格上昇は異常です。10月には18.4%にやや減速しましたが、依然リーマン危機当時を上回っています。

そのなかで金融の超緩和状況が急縮小し、引き締めに転じると、住宅市場をめぐる環境は一変します。特に長期金利に要注意です。ここまではFRBの利上げ前倒し姿勢を見ても、市場は半信半疑なのか、インフレという状況から長い間離れていて、イメージがわかないのか、長期金利は比較的落ち着いていました。このため住宅ローンの金利も大幅な上昇を免れています。

ここには市場もインフレが大きく進むことはなく、FRBも無理な引き締めには至らないと楽観している面があります。しかし、インフレが現実問題として長期化し、高止まりして、FRBが本気でインフレ抑制に立ち向かう必要を認めるようになると、長期金利は安定を維持できなくなります。

リーマン危機を教訓に、引き締めペースを市場に織り込ませれば、混乱は回避でき、景気は減速してもなお拡大を維持できます。しかし、インフレ抑制の結果を急ぐあまり、引き締めがオーバー・ペースになると、住宅バブルの崩壊につながりかねない要素となります。

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