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ホンダ、EV電池“中韓から調達”の報道に「がっかり」は早合点?中国系車載電池大手エンビジョンAESCの“素性”を知らず脊髄反射的に反応か

2040年までに、新車販売の全てを電気自動車(EV)などにする目標を掲げるホンダが、EV用電池を中国や韓国のメーカーから調達する方針だと明らかになったことが、ネット上で大きな反響を呼んでいる。

報道によると、北米市場向けの米国工場では韓国・LGエナジーソリューションから、中国市場用は中国のCATL、さらに日本市場向けには中国系のエンビジョンAESCというように、EVの生産拠点の近くに立地する電池工場から供給を受けるという。

ホンダとしてはこれらの電池調達によって、近々の新車計画のクリアを目指すいっぽうで、次世代電池として期待される「全固体電池」の自社開発は、20年代後半の実用化を目指して継続し、実現すれば切り替えたいとしている。

SNS上からは「リスクしかない」などの批判が噴出

車載用電池における世界シェアだが、先述のCATL(31.8%)やLGエナジーソリューション(20.5%)のトップ2を含め、上位10社のうち9社が中国や韓国の企業。いっぽう、この中韓勢以外の1社が、他ならぬ日本のパナソニック(12.5%)という状況だ。

ただ、そのパナソニックはすでにトヨタやテスラとの関係が深いのはご存じの通りで、すでにこの両社への供給で手一杯の状況。EV用電池の確保に遅れたホンダだが、中国で26年までにEV10車種を発売、また日本でも24年に軽EVを投入するといった新車計画をすでにぶち上げており、調達コストの問題もさることながら、それらの目標達成のためには中韓メーカーからの供給しか手はなかったというところだろう。

ただ、今回の中韓メーカーからの電池供給という報道に対し、日本国内からは「がっかり」「リスクしかない」「ホンダEVは購入選択肢から失くなりました」といった声が噴出。さらには「反日」といった批判まで飛び出す事態となっているのだ。

政治・経済をはじめ様々な面で対立することの多い中国や韓国からの調達は、経済安保の面でいかがなものかという声もあがるなか、いっぽうで根強いのがこれらの国々で作られる電池の品質を疑問視する見方。ことに中国では、例えば昨年6月にも四川省成都市の駐車場で充電中のEVが突然燃えだし、周りに停めていたEVの200~300台に延焼するなど、この手の出火騒ぎが度々報じられているだけあって、不安に思う層が多いのも無理もないところかもしれない。

さらにホンダといえば、世界に対して長らく強みであった“日本のものづくり”を象徴する企業のひとつ。それだけに、それが今では中韓から電池の供給を受けないとEVひとつも作れないのか……といった失望感を訴える声も、多く聞こえてくる状況だ。

日本市場車に電池を供給する「エンビジョンAESC」とは

とはいえ、我々が常日頃から使っているスマホやノートPCなどに搭載されているバッテリーは、すでに多くは中韓メーカーのものが採用されていることも事実で、今回の報道に怒りの声をあげる人々に対して冷ややかな視線を投げかける向きも多い。

さらに、今回の報道で日本市場向けのEVに電池を供給すると伝えられているエンビジョンAESCだが、現在は中国のエンビジョングループの傘下であるものの、もともとは日産自動車とNEC、NECトーキンの合弁で2007年に設立され、2010年代には「LEAF」などのバッテリーを生産していた会社だ。

2019年に同社をエンビジョングループに譲渡した日産だが、現在も同社株の一部を保有しているとのこと。確かに会社概要を見てみると、本社所在地も日本国内で、現CEOの松本昌一氏も、中国資本の傘下入りするかなり前の2010年には、すでに社長に就任している人物だ。また同社は、車載用電池の製造工場を日英米中に計4か所抱えているが、日本国内においては神奈川県座間市にある既存の工場にくわえ、目下のところ茨城県内にも新工場を建設中で、2024年には稼働し始める予定だという。

しかしSNS上の反応をみると、「中韓メーカーが…!」といった趣旨の声の多さに対して、日本市場車に電池を供給するエンビジョンAESCの、このような“素性”に関して触れている声というのは、かなり少ないといった状況。もしもそのことが周知されていたとすれば、今回のような反応になっていたかどうかは疑わしいところで、今回はいわば“勇み足”的な騒ぎだった可能性も。何よりもホンダは、現段階では電池を外注するものの、自前での電池開発をまだ諦めていないわけで、今後の推移を静かに見守りたいところである。

Next: 「エンビジョンAESCの歴史知らない奴だらけなのは…」

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