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ベネッセHD、ベルリッツ売却で株価上昇。都立高入試にも「英語スピーキングテスト」で食い込み“少子化社会”での生き残りに隙は無しか

ベネッセホールディングス(HD)は、語学教室を展開する米子会社のベルリッツコーポレーションを売却すると発表した。

報道によると、留学事業を手掛ける会社を傘下に持つカナダのILSCコーポレーションが保有する特別目的会社へ、14日付で全株式を譲渡したとのこと。譲渡額は明らかにされていないが、これにより2022年3月期連結決算で、特別損失約98億円を計上する見通しだという。

ベルリッツ売却を受けベネッセHDの株価は上昇

ベルリッツといえば1878年創業の歴史ある語学スクールだが、1993年にベネッセHDの連結子会社に。さらに2001年には同社の完全子会社となっている。仕事で外国語を習得する必要があるビジネスマン向けのコースが特に充実していることもあって、法人契約を結ぶ企業も多く、それだけにSNS上では今回の報道を受けて「以前に通ってたなぁ」という声も多くあがっている。

しかし、他の業種と比べても栄枯盛衰がかなり激しいのが語学スクールの世界。ベルリッツも例外に漏れず、すでにリーマンショックの頃には同業他社との競争もあり、業績的にも苦しい状況となっていた模様。そこに一昨年からのコロナ禍によって、それまでの対面による授業が厳しくなったのも大きな逆風となったようである。

いっぽう、過去に受講したことがあるという人々の声によると、講師陣やカリキュラムのクオリティに関して、他の語学スクールと比べてすこぶる高かったという評価が多い反面、それらと同様に多いのが“レッスン料が個人で通うには高額”といった声だ。

最近ではコロナ禍の影響もあって、オンラインの英会話スクールが爆発的に増えている状況。なかでもフィリピン人が講師を務めるものは、価格も1コマで何百円というものもあったりと、かなりリーズナブルだといい、それこそベルリッツのレッスン料と比べれば、同じ時間の長さでもケタがひとつ違うほどの差が。先述の通り講師陣やカリキュラムのクオリティなどでは一日の長があるとはいえ、その圧倒的な価格差が故に、かなり客を取られているのではといった見方も多い。

それだけに、親会社のベネッセHDとしてもベルリッツの存在は、いわゆる重荷となっていたのは想像に難くないところ。特別損失の発生により、22年3月期の最終損益は50億円の黒字から0円の見込みと修正したベネッセHDだが、15日の株価は上昇と、市場では今回のベルリッツ売却を好材料とみる向きが多いようだ。

都立高入試にしっかりと食い込むベネッセ

ベネッセといえば、自社が実施する英語民間試験「GTEC」が大学共通入学テストに導入が予定されたり、また同じく大学共通入学テストにおける記述式問題の採点業務を落札したりと、文部科学省との“浅からぬ関係”が大いに問題視されたのが、かれこれ2年ちょっと前の話。

【関連】ベネッセ、文科省と蜜月関係か。英語民間試験「TOEIC不参加」の理由で見えた不平等=原彰宏

その後、記述式問題にくわえて英語民間試験に関しても「実現は困難」として、2021年に導入の断念が正式に決まっている。

しかし、そのいっぽうでここに来て取沙汰されているのが、来年度の都立高入試の選抜に初めて導入される英語の“スピーキングテスト”だ。都内の公立中学校に通う3年生全員を対象に今年11月に行われ、英語4技能のうち“話す能力”を6段階で評価し、都立高校受験時の調査書に記載されるとのことだが、この問題の作成から試験監督、さらに採点まで行うのが、他ならぬベネッセやその協力会社だというのだ。

国や地方自治体の行う教育関連事業への積極的な食い込みにくわえ、今回は不採算化していたベルリッツをバッサリと売却。少子化の影響をモロに受けて、今後の展望は決して明るくないとされる教育業界だが、その巨人であるベネッセも生き残りをかけてなりふり構わぬといったところだろうか。

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