なぜ「一発当てて海外へ逃避」は挫折する?
俣野:昨年、日本で流行った「1億円を貯めてFIRE(早期リタイア)しよう」というのでは足りないと?
織田:はい。たとえばここ数年、シンガポールでしばしば見かけたのが、暗号通貨で一財産をつくった人たちです。暗号通貨のおかげで、普通のサラリーマンだった人たちの中からも、多くの“億り人”が出ました。
彼らがシンガポールにやってきたのは、「お金から生み出される利子で不労所得生活を実現しよう」と考えてのことなのだと思います。けれど私の知る限り、大半の人は上手くいっていません。
最低10億円は必要?「移住したらゴール」ではない
俣野:税金が安いことばかりに目を奪われていると、肝心の生活が立ちいかなくなる、ということでしょうか。
織田:結局のところ、暗号通貨を当てたのは、偶然の要素が強いということです。「暗号通貨を当てたから、次も当たる」とは限りませんので。
暗号通貨で当てた幸運を、実業に変えていかなければ、いずれ資金が尽きてしまうというわけです。
シンガポールは、起業すればビザは欧米よりも比較的取得しやすい国だとは思います。とはいえ、事業を継続できなければ、当然ながらビザも更新できません。
言葉や習慣が違う異国で、ぶっつけ本番に起業をするくらいなら、日本で起業したほうがはるかに楽なのではないかと思います。
俣野:「1億円じゃ足りない」というお話でしたが、移住を検討しても良いというボーダーラインはどれくらいでしょうか。
織田:シンガポールでいうと、最低でも10億円以上は必要だと思います。10億円をプライベートバンクに預けて、年10%の配当が取れれば、年間収益が1億円になりますから、不労所得も夢ではないでしょう。
でもそれだけの資金がないというのであれば、物価は日本のほうが安いですし、シンガポールに移住するメリットはあまりないと思います。
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