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「ウクライナ侵攻」あってもなくても株価暴落?リークされたバイデンの切り札“4つの経済制裁“でさらなる資源高騰へ=高島康司

<1. ミンスク合意の順守>

2015年にロシアとウクライナは、ドイツとフランスの仲介で「ミンスク合意」を締結した。東部ウクライナの分離・独立を要求している親ロ派へ大幅な自治権の付与し、ウクライナ政府と親ロ派は完全に停戦するという内容だった。この合意は順守されてこなかった。ロシアはこの完全な履行を求めている。ドイツとフランスも基本線は了承。

<2. 極超音速ミサイルをポーランドとルーマニアに配備しない>

極超音速ミサイルの開発ではロシアと中国が先行しているが、アメリカの「レイセオン社」が開発に成功。ロシアはこのポーランドとルーマニアへの配備を警戒している。ロシアは配備しないように要求。バイデン政権は水面下で交渉に応じている模様。

<3. ウクライナがNATOには加盟しないことの確約>

ウクライナはロシアの喉元にある。ウクライナがNATOに加盟し、ここにNATO軍が駐留することになると、これはロシアにとっての安全保障上の脅威となる。ロシアはウクライナがNATOに加盟しないことの確約を求めいる。

この3つだが、(1)と(2)に関しては、なんらかの妥協点が見いだせそうな状況だ。15日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領とドイツのショルツ首相との会談で、ゼレンスキー大統領は、東部親ロ派に特別な地位を与えるための憲法改正を提案する用意があるとした。これは、「ミンスク合意」のひとつである東部親ロ派への大幅な自治権認定という合意事項の実行に向けた一歩となる。また(2)についてもバイデン政権は、交渉の余地があることを認めている。

しかし、もっとも困難なのは(3)である。ウクライナのNATO加盟は同国の国家目標でもあり、NATOも強力にこれを後押ししている。簡単には妥協できない。

しかし、ウクライナとNATOの双方に少し違った雰囲気も出てきた。イギリスのBBC放送の番組に出演したウクライナの駐英大使は、ロシア軍の脅しに疲れ、ウクライナ政府にも、またNATOにもウクライナのNATO加盟断念を主張する声があることを紹介した。

この声がどのくらい強いのか分からないが、アメリカの威信を傷つけない方法であれば、実現可能かもしれないとしている。

簡単には経済制裁を発動できぬ欧米の苦悩

このように、ロシアと関係国の間で妥協が成立し、緊張が一気に緩和する可能性はある。しかし、今回の問題を契機にロシアを徹底して抑えたいバイデン政権は、いまも緊張を煽っており、ロシア軍のウクライナ侵攻がなかったとしても、経済制裁を発動する可能性がある。

では、それはどのような経済制裁になるのだろうか?

ヨーロッパでは約60%の天然ガスの供給がロシアに依存している。以下がロシア産天然ガスへの依存度の高い国々である。

・北マケドニア:100%
・フィンランド:94%
・ブルガリア:77%
・スロバキア:70%
・ドイツ:49%
・イタリア:46%
・ポーランド:40%
・フランス:24%

もし欧米がロシアに経済制裁し、その報復にロシアが天然ガスのNATO諸国への供給を停止すると、大変なことになるのは目に見えている。天然ガス価格は5倍にも跳ね上がるという想定すらある。

ロシアからの輸出に代わる代替品がないため、ヨーロッパでは天然ガスが大幅に不足し、天然ガス価格の上昇に伴い、ヨーロッパ全域で大きな社会的・経済的不安が生じることになる。イギリスを始め、かねてからインフレに見舞われているヨーロッパ諸国の経済は破綻の危機に追い込まれる。むろん、その前にあらゆる市場の大幅な下落があるだろう。

Next: ロシアの反撃を最小限に抑えながら実施される「4つの経済制裁」

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