欧米とロシアはウクライナをめぐり睨み合ったままであるが、ロシアへの経済制裁の内容の一部がリークされた。それを見るとバイデン政権は、欧州へのガス供給を独占するロシアからの報復制裁を恐れ、標的を絞った精密な制裁を検討しているようだ。こうした経済制裁は、発動されなくても、発表されただけで市場に大きな混乱を引き起こす可能性がある。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年2月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
対ロシア制裁が引き起こす経済危機の危険性
対ロシア制裁が経済危機の引き金となる可能性について解説したい。そのような可能性が大きいならば、我々も備えなければならないだろう。
15日、ロシア国防省は、ロシア軍がウクライナに近いベラルーシで行っていた訓練を終了し、今後は通常の配置に戻ることを発表した。
同省の首席報道官であるイーゴリ・コナシェンコフ少将は、軍の責任者たちが公開したビデオの中でこのニュースを伝えた。ロシア軍はベラルーシとの共同訓練「ユニオン・リゾルブ」を、2月20日までの予定で実施している。撤収した部隊は元いた基地に帰還する。
これは緊張緩和を示唆する動きかもしれないが、米バイデン政権はそのようには見ていない。
15日、バイデン米大統領は、ホワイトハウスで演説し、ロシアのウクライナ侵攻はなお起こり得るとし、一部部隊をウクライナ国境近辺から撤収したとするロシアの主張についてはアメリカはまだ確認していないと述べた。バイデン大統領はロシア軍の多くの部隊が依然としてウクライナを脅かす態勢にあると指摘している。
そうしたなか、ウクライナのゼレンスキー大統領の発言が注目されている。ゼレンスキー大統領はバイデン政権が戦争のパニックを煽っているとして非難していたが、今回は一転して16日にもロシア軍の侵攻があるとした。
だが、ゼレンスキー大統領の首席補佐官の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクは、その後のテキストメッセージで、大統領の発言は皮肉として受け止められるべきだと説明。侵攻が行われ得る日として言及されている「具体的な日程」について、ウクライナとしては依然として懐疑的だと述べた。
同国政府当局者は、ロシアによる大規模な攻撃のリスクは低いとの見方を繰り返している。
このように、ロシア軍のウクライナ侵攻の可能性が完全には消えないまま、外交交渉が続いている。
次第に明らかになる落としどころ
こうした状況で、ウクライナ問題の落としどころが次第に見えてもきている。
日本ではまったく報道されていないようだが、シンクタンク系の分析記事などを見ると、いまロシア、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスなどの関係国では、水面下で次の3点が検討されている。
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