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暗号資産を総崩れにするロシア「ネット遮断」リスク。ビットコインは安全資産になりえるか?=山本仁実

経済制裁による分断時の暗号通貨の存在

今後を考えるうえでやはり気になるのは、欧米や日本がロシアに対して実施している経済制裁の影響だ。

SWIFTからの排除などは、金融市場全体に与える影響が少なくはない。本来、国際的な銀行のネットワークを通じた基軸通貨の流通がストップするような状況は、ビットコインこそが本領を発揮する場面と言える。ロシアが積極的にビットコインを受け入れ、世界の経済との接点を保つ行動を起こすのかどうか、暗号資産業界としては注視していくべきだろう。

北米カナダでは、トラック運転手たちが新型コロナウイルスのワクチン義務化に反対し、デモを強行している。それに対する制裁として、デモ参加者の銀行口座が凍結される事態が起きた。そしてビットコインの需要は、必然的に高まる結果となった。

デモで訴えられたメッセージの良し悪しはここでは議論しないものとするが、制裁と、それに対する反応を見れば、まさにサトシナカモトが想定した事態が起きている。国家や銀行が個人の資産を凍結しようとした時、ビットコインが個人を守るのだ。

今ロシアで起きていることは、カナダのデモ参加者に対する制裁とは規模が違う。そのため簡単に比較することなどできないが、少なくとも経済制裁が長引いた場合には、ビットコインを始めとした暗号資産がロシア国民と世界の金融市場をつなぐひとつの選択肢になる可能性は否定できない。

世界情勢全体を考えれば、ビットコインが経済制裁の網の目をくぐり抜ける一助となることは望ましいとは言えない。それでも、サトシナカモトが提示した価値観のうえでは、個人の権利はいかなる状況でも守られるべきだとされ、少なくともビットコインは現時点で技術的にそれを可能にしている。

分散化社会の負の側面を見せたロシアへの経済制裁

何者にも支配されない分散化社会に「負の側面」があるとするならば、世界的に協調した、異分子の排除ができないことがそれにあたる。中央集権的に急成長を遂げ、少数の企業が市場を寡占している「Web2.0」の世界では当たり前にできることが、できなくなる。

その構造が良い結果を生むのかそうで無いのかは、現時点では判断することができない。社会が変わる過渡期である今、混乱は続くことになる。それでも、ビットコインをはじめとする暗号資産が悪いものだという結論に至らないように、業界全体で果たすべき役割があると考えている。

経済も政治も、多様性を受け入れる余地はまだあるのだ。しかし同時に、その多様性の中に、独裁や一方的な暴力を許容する余地はあってはならない。尊い命や尊厳を犠牲にしてまで、私たちが今回目撃しているのは、互いを尊重し合う分散化社会の重要性だ。

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