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暗号資産を総崩れにするロシア「ネット遮断」リスク。ビットコインは安全資産になりえるか?=山本仁実

インターネットが分断される世界

この先の10年を考えるならば、誰もがインターネットのさらなる発展と、より自由で平等な機会の到来を夢見るものと思っていた。しかし今、ロシアはインターネットの分断さえも示唆している。その時、世界に起こる影響は大きすぎると言わざるを得ない。

ブロックチェーンの前提となるインターネットの公共性が損なわれる社会、物理的な相互接続が維持されない社会。それが現実のものとなると、想定外の事態がドミノ倒しに起こるリスクがある。

暗号資産に関して言えば、主要なブロックチェーンが一斉にフォークすることや、特定の仮想通貨資産が消滅してしまうような事態にもなりかねない。そんな乱暴な未来は、本当にやってきてしまうのだろうか。

インターネットの分断を回避するためには、人工衛星やドローンを利用した通信技術の普及や、国家の設置する壁を越えられるネットワーク技術の普及が急務となる。Blockstream社のように、すでに人工衛星でビットコインのマイニングを行う企業もあるし、SpaceX社のStarlinkのように衛星通信を民間に広く開放する企業もある。

これまでは実験の粋を出ないと思われていた研究開発事業が、突如として実利を伴う事業として際立ち始めた。

例えば宇宙空間での仮想通貨のマイニングは、地上でのそれを超える効率性が期待できるかもしれない。打ち上げコストや通信コストが下がり採算が合うようになれば、宇宙でのマイニングが産業として発展し、世界の分断を抑止する未来がやってくるかもしれない。宇宙開発は、もはや国防上の問題として国家に任せておくことではなくなる。民間で、あるいは「DAO(分散型自律組織)」を通じた有志の集まりとして、真剣に取り組む課題として選択肢に挙げる時代が到来した。

世界を分散化することには大いに賛成だが、これ以上、世界を分断させてはならない。あらゆる産業界が強調し、乗り越える手段を講じるべきだ。

我々は議論を続けなければならない

今回の動乱の中、ビットコインの持つ本質的な価値を改めて再認識したのではないだろうか。

経済的に強い国がそうではない国に制裁を課したり、あるいは個人の資産を凍結したとしても、ビットコインは個人を守る。資産の保有に誰の許可も必要なく、移動を止める手段も無い。

しかし人類は、まだそれを受け入れる準備ができていないのかもしれない。暴力という最終手段が取られたときに、拳を振り上げる人を守る技術ともなる可能性が目の前にあるのだ。

現時点で取り入れられる解決策として、スマートコントラクトによる協調の制御と、トークンによるガバナンスの強化などが考えられる。一部のブロックチェーンでは、トークン保有者の合意やマイナーの合意により、特定の資産が剥奪されたり、制御下に置かれることはあった。

分散化社会を謳うブロックチェーンのエコシステムでもそれが起きるのだから、中央集権と分散化の議論に唯一の正解は無いと言える。

WEB3.0という言葉が急速に注目を集めているが、分散化された世界の実現には乗り越えていかなければならない課題がまだまだたくさん残されている。私たちはこれからも議論を重ね、前進していかなければならない。

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取材協力:㈱カロスエンターテイメント
image by:Bumble Dee / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年3月20日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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